2020年米大統領選(5)

昨日、エリザベス・ウォーレンが出馬表明したとご報告したが、米時間10日にまた新たな候補が大統領選に打ってでた。ミネソタ州上院議員のエイミー・クロブチャー(58)だ。

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Photo from Facebook

クロブチャーはすでに上院議員を12年勤め、昨年11月の選挙で再選されたので今年で13年目を迎えている。上院議員としては目立っていないが、2016年にスカリア最高裁判事が他界したあと、後任の1人として名前が挙がった人で、政治家としてよりも法律家としての方が評価が高いかもしれない。

2020年大統領選は候補が乱立することになる。過去の大統領選をみると、現政権への不満が増幅している年は候補数が多くなる傾向がある。1992年のニューハンプシャー州の予備選ではパパブッシュへの不満から、投票用紙には民主党だけで60数名の候補名が連なっていた。

同州は立候補規定が他州とちがって緩やかなこともある。アメリカ人であり、1000ドルを支払えば誰でも立候補できるため「俺も俺もと考えるオジさん」が多数いた。来年の予備選では新記録となるくらいの候補が並ぶかもしれない。(敬称略)

2020年米大統領選(4)

米時間9日、民主党からもう1人、有力候補が出馬表明をした。マサチューセッツ州上院議員のエリザベス・ウォーレンだ。

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(2015年7月20日号の『タイム』誌の表紙)

昨年大晦日に出馬のための準備委員会を設立したと発表していたので、出馬は時間の問題とされていた。オクラホマ州出身で、12歳の時に父親が心筋梗塞で倒れ、アルバイトで家計を助けながら学校に通った人である。

学生結婚をし、子供を育てながらロースクール(ラドガーズ大学法科大学院)に通い、のちにハーバード大学法学部教授にまで上り詰める。そして2013年から上院議員になり、大統領選への出馬を視野に入れはじめた。ハーバード大学で教鞭をとっていた時は契約法や破産法を教えており「大変厳格だが思慮深く、思いやりのある先生」との評がある。しかも当時、同大教授の中では唯一、州立大学出身で、優秀さが際立っていた。

子供時代の境遇もあり、金持ちと低所得者との賃金格差や社会の分断の是正を訴えている。彼女のような人が大統領になると、本気で格差をなくすために諸策を講じるだろうと思う。

人間としてたいへん信用のできる候補だが、それだからと言ってウォーレンが大きな支持を得られるかどうかは別問題だ。ただ彼女の訴えは理になかっている。(敬称略)

 

これまで出馬表明した主要候補を上から日付順に列挙。

フリアン・カストロ(44:前テキサス州サンアントニオ市長)1月12日表明

カースティン・ジリブランド(52:ニューヨーク州上院議員)1月15日表明

カマラ・ハリス(54:カリフォルニア州上院議員)1月21日表明

コーリー・ブッカー(49:ニュージャージー州上院議員)2月1日表明

エリザベス・ウォーレン(69:マサチューセッツ州上院議員)2月9日表明

両手握手のあたたかさ

昨日、テレビ朝日ワイドスクランブルに出演したとき、私はいつもと少し違う動きをした。

いつもであれば、出番が終わるとすぐに席を立ってスタジオを後にするのだが、昨日は担当のコーナーが終わってから、レギュラー・コメンテーターの杉村太蔵、弁護士の萩谷麻衣子、元NHK解説員の柳澤秀夫とスタジオ内で座ったまま少し話をした。

そこで司会を務めるテレ朝アナウンサー大下容子の番組の回し方がうまいという話になった。大下も話を聴いており、本人は「イヤイヤイヤ」と首を振る。いつも謙虚な彼女はけっしてでしゃばらず、それでいて司会としての仕事をキチッとこなせる能力を持った人だ。

過去3年ほど、私にとってはもっとも出演回数の多いテレビ番組だけに、大下を応援したい気持ちは強い。特に昨年9月で橋本大二郎が司会を降りてからは大下が主役である。

昨日、私は話が終わると大下の方に数歩近づいて、右手を差しだした。

「頑張ってください」

彼女は本能的と思えるほど自然に、両手で私の右手を包み込んだ。握るか握らないかくらいの力である。だが優しさのこもった握手だった。

スッと嬉しさがこみ上げてきた。

スタジオを出たあと、男から女性に右手を差しだすことは非礼であるとの通念は、今日は不問にしてもらえるなという勝手な思いがあった。それほど彼女の両手握手は自然で、暖かさがあった。

大下の好感度がまたあがった。(敬称略)

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(2017年5月撮影)

Media appearances

明日の放送メディア出演予定:

 

・2月6日(水)7:00amから     東京FM(周波数80.0MHz)『クロノス

・2月6日(水)10:30amから テレビ朝日『ワイド!スクランブル

 

日本時間明日(6日)午前11時からトランプ大統領による一般教書演説があります。そこでの注目点をお話します。ワイドスクランブルはもしかすると午後の部も出演するかもしれません。

公正世界仮説

これほど愚かなことがあるだろうか。

トランプが米露間の中距離核戦力(INF)全廃条約を破棄したことを受け、プーチンも条約の義務を守る必要はないとして2日、破棄をきめた。それにより今後6カ月以内に両国が考えを改めないかぎり、せっかくの条約が無になる。

条約の破棄によって両国がすぐに戦争をはじめるわけではないが、時代を逆行させたことに等しい。同条約が発効した1987年以前にもどることになる。

戦争が人間にとっていかに愚かであるかを両首脳は考え直さないといけない。戦争で犠牲になるのは一般の無辜な市民である。再び核兵器が増えていくということは、大げさな言い方をすれば絶望と恐怖をまねき、人間の夢を打ち砕くということに他ならない。

80年代、核兵器を減らそうとの意志でレーガンとゴルバチョフが条約を締結したはずである。世の中は少しずついい方向に向かっていくかに見えたし、いまでも世界は少しずつ前進していくと考える方も多い。これを「公正世界仮説」という。

世の中は公正にできているので、いずれ悪は滅び、最後は正義が勝つという仮説だ。アメリカの社会心理学者メルビン・ラーナーがいい始めた学説で、多くの人が信じたがる仮説だが、実際はまったく逆の結果が生まれることもたびたびあり、人間が未来に向けて必ずしも賢明な選択をするとは限らないのが現実の世界である。

戦争ほど愚かなことはない。(敬称略)