顔は笑っている

いまにもアメリカと北朝鮮が戦争を始めるかに見える。

しかし、そう見えるだけで、当事者であるトランプと金正恩は意外に冷静であるかもしれない。それは1時間ほど前にトランプが自身のフェイスブックにアップした動画を観ると推察できる。

「日本はわれわれがやっていることに満足(happy)していると思う」と述べ、唖然とさせられるが、実は中国を強力にプッシュして事態の打開をさぐっている。

軍事オプションは用意しているが、できれば平和裡に解決したいというのが本音だ。国務長官のティラーソンや国家安全保障担当補佐官のマクマスターが大きなブレーキ役になっているはずだ。

とにかく金正恩をできるだけ追い込んで、アメリカとの交戦を諦めさせるという作戦だ。本気で北朝鮮を攻撃する気はないように思える。トランプの顔は笑っている。

それでも数%は可能性がある。日本はそれに備えるべきであ(FBにアップされたニュージャージーでの会見)(敬称略)。

真剣さが足りない!

北朝鮮がミサイルを発射するたびにメディアはニュースとして取り上げるが、多くの人にとって、すでに「またか」になってしまった。

よほど注視している人か専門家でもない限り、ミサイルの種類に気を配ったりしない。だから 高度が3700キロを超えたICBM「火星14型」が発射されたと聞いても市民の真剣さは増してこない。

さらにトランプが本気で北朝鮮に戦争をしかける可能性をほのめかしても、「他国の話」になってしまった。これが金正恩の狙いであるとは思わないし、そこまで日本人の心を読めていたわけではないだろう。

それでも、現実問題として日本はいま「北の脅威」が脅威でなくなってしまっている。内閣改造の方が国民の関心は高い。

トランプが本当に北朝鮮に先制攻撃をしかけ、朝鮮半島で戦争が起きた場合、地政学的に日本が傍観者でいるわけにはいかないのだ。たとえ数%でも、日本がミサイル攻撃を受ける可能性がある限り、もっと真剣でなくてはいけない。

政府や市民レベルで議論はまったく足りていない。戦うのか、国外に逃げるのか、防空壕を作って逃げ込むのか、それとも政治活動を起こすのかといった具体的な話題がでてきていない。避けて通れない話なのだが・・・。(敬称略)

ドタバタはこれで収まる?

ホワイトハウスの人事の動きが凄まじい。

7月21日に広報部長になったばかりのアンソニー・スカラムチが米時間31日に解任された。メディアでは辞任となっているが、過去2週間で政権を去った人たちはすべてクビにされたと見るべきだろう。

・ショーン・スパイサー広報部長  ➡︎ 解任(7月21日)

・ラインス・プリーバス主席補佐官 ➡︎ 解任(7月27日)

・アンソニー・スカラムチ広報部長 ➡︎ 解任(7月31日)

報道官が交代することは過去の政権でもよくあったが、これほど短期間で代わることはなかった。

「やらせてみたらダメだった」というのはどの組織でもあることで、「辛抱して続けさせる」方法と「おまえはクビ」の方法がある。トランプ政権では間違いなく後者が選択されている。

ただ31日に主席補佐官に就任した元海兵隊大将のジョン・ケリーが、軍隊で培った統制力をホワイトハウスに持ち込んで、トップダウンの流れを作るようにも思える。

真っ先に手をつけたのが、スカラムチをクビにすることだった。

スカラムチの弁明は「ケリー氏がきたことで、(人事を)白紙に戻すことが最良だと思った」である。(敬称略)

コミー前長官の爆弾発言

5月9日、トランプはFBI長官ジェームズ・コミーを突然解任した。そのコミーが8日、連邦議会上院の情報特別委員会の公聴会に現れて、「なぜ私が解任されたかわからない」と1カ月たった今でも、本当の理由はトランプから聞かされていないと述べた。

CNNの生中継でコミーの表情や話ぶりを見る限り、誠実に受け答えしているように見えた。真実を語る姿勢がうかがえる。

9日午後のテレビ番組で、コミー証言について話をすることになっていたので、メモを取りながら観た。

はっきりしたのは、コミーはトランプに「全面戦争」と言っていいだけの戦いを挑んだことである。

戦いを挑んだ以上、大統領をかばうような嘘をつく必要はない。真実をつきつけることが、FBI長官だったコミーの使命でもあった。

解任前、コミーは元大統領補佐官マイケルフリンと駐米ロシア大使との関係を捜査していた。トランプは自分の部下が捜査されるのを嫌い、コミーを解任。それが司法妨害にあたるかが注目点の1つになっている。

ただ公聴会では、それ以上に注目すべき爆弾発言があった。ロシア政府が昨年の大統領選挙に大々的に介入していたというのだ。

これまでは「疑惑」のレベルでとどまっていた。しかしコミーは言い切った。サイバー攻撃は「少なくとも数百回におよんでいた」と断言したのだ。

「ロシア政府が2016年の大統領選に介入したという点は疑いようがありません。目的をもって介入していました。洗練された方法を使っていたのです」

これは5月23日にCIA前長官のジョン・ブレナンがやはり議会公聴会で「ロシア政府による選挙介入があった」という証言内容と合致する。

諜報機関のトップだった2人による発言である。しかもメディアが報道した内容ではなく、嘘を言えば偽証罪に問われる公聴会の証言だ。

これからFBIとCIAという米諜報機関とトランプによる全面戦争がはじまることになる。また忙しくなりそうである。(敬称略)

マクロン勝利の意味

フランスのエマニュエル・マクロン氏(以下マクロン)が次期大統領に当選した。

39歳という若さや極右のマリーヌ・ルペン氏を破った点に関心が集まるが、私は既成政党ではなく、中道系候補として当選を果たしたところに意義があると考えている。

これまでの古い政治体制を打ち破るという点で、39歳という年齢はそれだけで魅力があったし、トランプ政権の反動という意味から反ルペンの流れができたとの見方は間違ってはいない。

ただ保守対革新という古い図式から1歩ではなく2歩ほど先に進んで、政治に新しいモデルを取り込んだ。労働環境をより柔軟にする主張や公務員の終身雇用の廃止といった内容にマクロンの考えが表れている。

右派と左派の仲裁をするということも口にしてもいる。どちらにも寄り添わない点がマクロンらしさであり、今後も新しいことに挑戦し続けていってほしいと思う。

すでに急進的な左派と右派から嫌われているが、自分流を貫き続けながら、広い支持が得られることを願っている。