寒波の本当の理由

日本をふくめ、欧米が寒波に見舞われている。

テレビニュースの気象予報士が「寒波の理由は、、、、」といったので、そのあとに続く言葉に全神経をそそいで観ていた。

「北極を中心に、時計と逆回りの偏西風の蛇行が影響しているからです。地域によって偏西風が南に蛇行して気圧の谷をつくり、そこに寒気が入り込んでいるのです」

私はテレビに向かってヒトコトいった。

「それは理由になっていない」

偏西風が南に蛇行しているのは現象であって、どうしてそうなるかを知りたかった。ましてCOP15が終わり、地球温暖化が世界的に騒がれているなかでの寒波襲来である。それが一時的なものなのか、それとも今冬はずっと寒いのか、本当の理由はほかにあるのかが私の関心がいくところだった。

先月のブログ(気温のナゾ )でも書いたように、温暖化は化石燃料の燃焼以外にもあるというのが私の考えである。実は2年ほど前から、今年から数年間は太陽活動の停滞が騒がれていた。

それは太陽黒点の周期の長さと北半球の気温変化との相関関係をみればあきらかで、07年にロシアのアブドサマトフ天体観測研究所が、黒点の数が減って17世紀から18世紀にかけてみられたミニ氷河期がふたたびくるかもしれないと予測していた。

           

                           

今年になってからも、冬は100年に一度の寒さかもしれないとの見方がでていただけに、気象予報士からはこうしたニュアンスの説明があるかと待っていたが、まったくなかった。

これはもちろん学説の一つにすぎないので、断定的に述べることはできないにしても、こうした説もありますくらいの話は聞きたかった。

私は科学者ではないが、さまざまな論文をよむたびに温暖化が温室効果ガスだけではないという考えに傾いてきている。二酸化炭素などの温室効果ガスの赤外線吸収波長域は15マイクロメートルに限定されていて、地球温暖化の原因になる気体中、二酸化炭素はせいぜい3%にとどまるとも言われる。

そうなると太陽活動が地球の気温にもっとも影響をおよぼしていることになる。

かりに今後2,3年でミニ氷河期といわないまでも、極寒の冬と冷夏が続いたとしたら、温室効果ガスの主張者たちは「二酸化炭素は心配いりませんでした」と弁解するのだろうか。

未知なるフード

それにしても、食べるものは奥が深いと思う。

外国特派員協会で机を並べて仕事をしているドイツ人記者が、先週末自宅でのクリスマスパーティーに招いてくれた。彼が作ったドイツ料理はブレーメン風ということだったが、メインの鶏料理とグリューワイン(ホットワイン)は生まれて初めて味わうものだった。

特にグリューワインはクリスマスシーズンだけだという。赤ワインを鍋にいれて火にかけ、オレンジを絞り、シナモンなどの香辛料を加え、さらにラム酒をいれる。サングリアのホットバージョンである。

              

ドイツだけでなく、フランスをはじめとするヨーロッパ諸国ではこの時期によく飲まれるという。知らなかった。パーティーに来ていたイギリス人は「イギリスでも飲む」と言った。英語ではMulled Wineという。

けれども、アメリカではほとんど見かけない。私が出会ったことがないだけかもしれないが、25年間のアメリカ生活で暖かいワインを飲んだ記憶はない。この時期であれば、やはりエッグノッグである。

パーティーでは食べものにも話がおよんだ。中国人もいて「日本には餃子がない」と驚くことをいう。

日本の餃子と中国の餃子が違うことはすでによく知られている。日本では焼き餃子が一般的だが、中国で餃子といえば水餃子ある。それはずいぶん前から知っていた。

でもその女性はその違いだけでなく、中国では皮が薄いものを餃子とは呼ばないといった。確かに中国でたべる餃子はどれも皮が厚い。それはそれでおいしいが、日本ではむしろ皮が薄いほうがおいしいとされているように思う。

国だけでなく土地が変わるだけでオリジナルから派生した別バージョンの代物が登場するのが文化の特質であり、面白さである。だから、食べものの好みは捉えられないくらいに広い。

しかし、違ったものがある以上、私はオリジナルとそのほかのバージョーンをすべて味わってみたいと思う。

気温のナゾ、再び

クライメイトゲート。

11月9日のブログに「気温のナゾ」というタイトルで、地球温暖化の原因についての疑問を投げた。すると偶然にも、同月20日、イギリスで温暖化のデータが人為的に歪められていた可能性があるという報道がでた。

欧米ではいまそれを「クライメイトゲート(Climategate)」事件と呼んでいる。 ただ、日本国内の主要メディアがほとんど取り上げていない。国外メディアがあつかう記事を国内の報道機関が報道しないことはよくあるが、これもその一つ。

発信元となったイギリスではBBCはもちろん、保守系新聞のタイムズ、アメリカではニューヨーク・タイムズやウォールストリート・ジャーナルといった主要紙も報道している。十分に疑問符を打つべきテーマであるにもかかわらず、日本が無視している理由がよく理解できない。

事件のあらましは、11月17日、イギリスのイースト・アングリア大学の気候調査部(CRU)のコンピューター・サーバーにハッカーが入り込み、1000以上の電子メールと地球温暖化にかんする3000以上のファイルにアクセスされ、公開されてしまったというものだ。

その中に、60年代以降、気温の上昇がそれほど見られなかった時期のデータは使うなという記述や、気温上昇について否定的なデータや懐疑的な内容の電子メールがあり、それを削除すべきということも書かれていたという。

温暖化については、人間が二酸化炭素を排出していることは事実であるし、削減努力をすることは必要だが、同時に温暖化の真実が何なのかも総合的に追及すべきである。

気温のナゾ

東京は穏やかな晩秋の日が続いている。11月初旬であるにもかかわらず、コートなしで外出できる。

昔を思いかえしてみると、小学生の頃の方が確実に寒い日が多かった。普通であれば、ここで地球温暖化という言葉がでるのだが、私はかねがねその信憑性に疑問をいだいてきた。

その発端はアラスカ州のイヌイット(エスキモー)の取材をした時にさかのぼる。北極海の氷が溶け出すスピードが速まり、北極海をおおう氷の面積が減っている。周囲の自然を知り尽くしているイヌイットは、驚いたことに「化石燃料のせい」といわなかった。

1年365日、狩りをしていたビリーは、イヌイットに何万年も伝承される「かれら流の自然」の話してくれた。

 by NASA

「いまから1万5000年くらいまえに氷河期が終わっている。いまは間氷期だから気温があがるのはあたり前さあ。イヌイットの暦って知っているかい。365日じゃないんだ。氷河期のサイクルなんだよ」

「ホントウ、、、、、」

すぐには信じられなかったが、気温の上昇を氷河期のサイクルとして捉えていたことには驚かされた。

少し調べてみると、アカデミズムの世界でも地球温暖化を化石燃料の燃焼として説明する理論と、「地球軌道の変化による放射強制力の上昇」とする理論があり、後者は氷河期のサイクルのことをさしている。

人間が気温や大気のことを科学的に分析しはじめたのは20世紀に入ってからにすぎないが、コンピューター・シュミレーションなどから、過去の大気中の二酸化炭素濃度やメタン濃度などがわかってきている。

そうしたデータをみるかぎり、前回の間氷期だったおよそ12万年前の南極の気温はいまより摂氏3度も高かった。二酸化炭素濃度やメタン濃度も現在より高かったと推測される。

そこから言えることは、温暖化は化石燃料の燃焼だけではないということだ。時間軸を計算すると、いまはさまに間氷期であり、気温が上がる時期なのだ。もちろん数万年後にはまた氷河期がやってくるので、寒冷地帯は凍りつく。過去40万年のシュミレーションデータをみるとそうしたことが推論できる。

だからビリーの話は外れてはいなかった。

けれども、間氷期の理論だけを温暖化の理由にしてしまうと、いまのグリーンエネルギーへの努力が無駄になるから、無節操に石油や石炭を使い続けるべきでないことは言うまでもない。

ノーベル賞受賞のコツ

オバマがノーベル平和賞を受賞したことで、世界中に賛否両論が渦巻いている。

私は「平和賞にあたいするだけの功績はなにも残していない」という考えなので、個人的にオバマへの愛着はあっても、受賞そのものには反対である。今年1月のブログに、オバマはノーベル平和賞を取るかもしれないとは書いたが( 参照:So long, Bush!)、中東和平を実現させてからという注文をつけた。

オバマはいまだにその分野で大きな1歩さえ踏み出せていない。プラハでの核兵器廃絶への大胆な演説が評価対象ともいわれるが、それとて成果という段階にさえ至っていない。前向きな政治姿勢に対してということだけであれば、評価が甘い。「期待賞」ということであれば極めて異例である。

なぜノーベル賞を受賞できたかという点で、私は一つ思いあたることがある。

90年代半ば、ジョージア州アトランタでノーベル文学賞受賞者の集いがあり、取材したことがある。生存する受賞者がほとんど顔をそろえていた。大江健三郎も出席し、彼に話を聞いた。またナイジェリアの詩人、ウォーレ・ショインカとも話をした。

そこでわかったことがある。それはノーベル賞を取るコツとでもいえるものだ。

文学賞の場合、まず英語で多くの作品が出版されていなくてはいけない。さらに重要なのは歴代の受賞者が「次は誰にするか」という時、推薦する権利があり、影響力を持つということだ。大江はショインカだけでなく、他の受賞者を受賞前から知っていた。もちろんこれだけが理由ではないが、ひとつの力にはなる。

今年の平和賞には205人がノミネートされていた。200倍強の倍率でオバマが選出されたのは、オバマに好意的と伝えられる05年受賞者のムハンマド・エルバラダイや、07年に受賞したアル・ゴアの推薦があったからかもしれない。しかしオバマが「自分を推して」とは言わなかっただろう。

いずれにしても、彼には前を向いて走ってほしいだけである。(敬称略)

        

       By the White House