香港デモ:民主主義の危機

香港でのデモが続いている。いまのところ終わりが見えない。

事態は複雑化しているかに見えるが、基本的対立は民主主義対共産主義である。上からの決まり事を押しつけてくる共産主義と、香港市民が享受してきた民主主義の対立である。

香港は1997年にイギリスから中国に返還されたが、「一国二制度」を維持して北京の共産党政権から距離をおいてきた。だが今回のデモの発端である「逃亡犯条例」改正案は、北京の共産主義が香港の民主主義を脅かすことにつながるため、香港市民が蜂起したわけだ。

同改正案は香港で検挙した容疑者を中国本土に引き渡せるようにする内容で、いかにも北京政府がやりそうなことである。少しずつ香港を共産圏に取り込んでいくという思惑の一端であるかにみえる。

安倍もトランプも習近平に配慮して、はっきりと北京を攻撃しない。日米は民主主義国の代表のような顔をしながら、香港を積極的に支持しないのだ。これは民主主義よりも共産主義をサポートすることにつながる。

安倍・トランプが香港を支持すると、習近平から「国内干渉だ」と言われて北京政府との関係が悪化するため、消極的な態度でいると思われる。香港の立場を支持しているのは一部の欧米メディアやアメリカ連邦議会議員などである。連邦下院外交委員会は超党派で香港市民を支持する声明を発表したほか、香港の自治擁護の法案を提出している。

トランプは16日のツイッターで「中国の習主席のことはよく知っている。すばらしい指導者だし、ビジネスをする上でも優れた人物だ。香港の今回の問題でも早急に、人道的に解決してくれるはずだ」と述べて、習批判はしていない。

もし香港市民たちが黙らされてしまうことになれば、それは基本的人権を奪われるということであり、世界的にみても民主主義の危機と言っていい。(敬称略)

やる気ですか、大統領?

3日前の当ブログで、アメリカがいまイランとの交戦に向けていくつもの布石を打っているという記事をご紹介した(イラン攻撃へ準備整えた米国、一触即発の危機)。

アメリカ時間18日、いよいよという流れで米軍の強襲揚陸艦「USSボクサー」がホルムズ海峡でイランのドローンを撃墜し、両国の緊張がより高まっている。6月20日にイランがアメリカのドローンを撃墜したので、「お返し」という動きでもある。

ベトナム戦争の契機となったトンキン湾事件では、連邦議会も圧倒的多数でベトナム戦争介入を支持した。後年になってアメリカ側が仕組んだ事件だったことが判明するが、時すでに遅しで、ジョンソン政権は長期におよぶベトナム戦争に突入してしまう。

仮にイランと戦争になると、長期戦になることが予想されるので、アメリカ・イラン両国だけでなく関係国にとってマイナス面しか頭に浮かばない。

ただ状況を冷静に眺めると、このまますぐに戦争に行くとは思えない。トランプはツイッターで「ボクサーはイランのドローンに防衛行動をとった」と記しただけで、すぐに交戦にいたる流れではない。むしろ、いまの時点で行動を自重することが肝心で、イランなどすぐに壊滅できるなどといった誤認をトランプが信じて過激な軍事行動にでないことを切に望む。

いくらトランプが暴君であっても、ペンタゴンの将軍たちが「イランはイラクのようにはいかない」という事実を伝え、間違った行動をトランプに起こさせないようにしなくてはいけない。ペンタゴンだけでなく、直接電話で話ができる安倍がこういう時にトランプに箴言すべきである。(敬称略)

トランプ来日に思う

トランプが来日し、日本のテレビや新聞は大騒ぎである。国技館では升席を外して特別席を設置する破格の扱いだ。

過去何十年と続いてきたアメリカ優遇の姿勢が、いまだに日本の隅々にまで染みわたっているかのようですらある。それは特に日本の政財界トップに顕著にみられることで、「アメリカには逆らえない」という思いが底流としてあるからなのだろう。

トランプ来日直前、経団連会長の中西宏明は「トラの尾を踏まないよう、対応策をしっかりとらないといけない」と発言した。21世紀、いや令和の時代になってもいまだに「トラの尾を踏まないように」といった消極的な発言をアメリカに使っている。

それほどアメリカが怖いのかと思う。トランプに張り手を食らわせることは決してしないのだ。理念よりも実利を取る政策はほとんど揺るぎがないと言えるほどである。

突っ張ることで制裁関税を課され、巨額の損失を被るよりはマシとの考え方があることは分かる。だが、一国家が国益を追求し、時に理念を押し通すことも必要だ。

いつかそんな日は来るのだろうか。(敬称略)

トランプの本性

トランプがまた毒づいた。米時間5月20日、イランに対して強烈なカウンターパンチを食らわせた。ツイッターでこう呟いている。

「イランが(米国との)戦いを望むなら、その時はイランが本当に終わる時だ。だから決して米国を威嚇するなよ!」

民主国家の大統領が使うべき表現ではない。

他の大統領であっても、同じようなことを考える人はいるだろうが、言葉を選ばないといけない。アメリカが本気になって米軍を総動員させたらイランが敵わないことは子どもでもわかる。だからこそアメリカは配慮ある言動をしなくてはいけない。

高圧的なツイッター外交は止めないと恥ずかしい!

上皇天皇が述べた「平和の海」

平成の時代に天皇だった明仁さまは今、上皇明仁と呼ばれる。いまも昔もすぐにお目にかかれる方ではないが、1993年6月、私はホワイトハウスでお目にかかる機会があった。

当時のビル・クリントン大統領が両陛下をワシントンに招待し、ローズガーデンという南庭で両陛下にお目にかかったのだ。私は前年にホワイトハウスの記者証を得ていたので、日本人ということもあり招待されていた。

陛下はクリントン氏と招待客に対して長めのご挨拶をされた。その中で、ドワイト・アイゼンハワー大統領を訪ねて以前にもホワイトハウスを訪れていたことを知った。

もっとも印象的だったのは、日米両国の関係に言及された時の言葉だった。「これからも平和な交流が長く保たれ、太平洋が『平和の海』になることを切に希望します」と話されたのだ。

「平和の海」という言葉は新鮮だった。いまでも新鮮な響きがある。知性主義に根ざした両国の思いがその言葉に集約されているように感じ、大変心地よかったと同時に実践していかなくてはいけない、と思ったことを覚えている。

トランプ大統領が国賓として今月下旬に来日する。そこで同大統領はいったい何を語るのだろうか。

rosegarden5.9.19