トランプからのEメール

朝起きてEメールをチェックすると、トランプ大統領からのメールが入っていた。以前にも当ブログで記したように、私はトランプ政権の第一期目から同氏をフォローしており、先方から情報を送付してもらうためにメルアドを伝えてあるので、よくメールが届く。

今日のメールは:

Do you know what my favorite part of being your President is?(私が大統領になって一番好きなことは何だと思いますか)

It’s not signing Executive Orders – but I do LOVE that part of the job!(大統領令に署名することではないです。この仕事をすることが好きなのです)

The truth is, there’s absolutely NOTHING I love more than traveling across this incredible country, shaking hands with REAL American PATRIOTS like you. I really mean that!(実は、この素晴らしい国を旅して、皆さんのような本物の愛国者の方々と握手することが何よりも好きなのです。本当にそう思います!)

So, how would you like it if I made my next stop in your hometown?(次に私があなたの住む町に立ち寄るというのはいかかがでしょうか)

この文章の後に、「献金してください 。ご献金はトランプ全国委員会の利益になります 」という言葉が続いた。そして10ドルから1000ドルまでのボタンがあり、ネット上で献金ができるようになっている。

選挙中であれば、選挙資金を稼ぐためにどの候補もこうした献金の依頼をネット上で行うが、トランプ氏はすでに大統領である。ホワイトハウスで寝起きする立場にいながら、いまでもこうした献金を懇願してくるのだ。これが米政治の現実と言ってしまえばそれまでだが、偉そうなことを述べていても、「10ドルでいいですから献金してください」というのがトランプ氏の本音である。

トランプの寡頭政治は世界を混乱させる

ドナルド・トランプ氏(以下トランプ)が大統領に就任してからもうすぐ1カ月が経とうとしている。大統領として米国の頂点に君臨するのは2回目になるが、私は最初の政権の4年間から多くを学び、もう少し穏やかな行政をつかさどるようになるかと思っていたが、期待外れだった。

その言動はまるで「大統領という地位にいれば出来ないことはなにもない」とでも言わんばかりで、自分には全知全能の神がついていると錯覚しているようですらある。たとえば、1月20日の就任から2月12日までに計65本の大統領令に署名している。大統領令は議会の承認なしで決定できる大統領の特権で、過去40年ではもっとも多い。それは文字通り、「大統領の一存で動かせる力」と述べて差し支えないのだ。

モントリオール大学のロドリク・トレンブレー名誉教授はネット上で、「ドナルド・トランプは急進的な政権を築き、自分一人で世界中の知識を手中に収めているかのごとくで、大統領としては欠陥だらけである。ほとんど独裁的と言える大統領令が次から次へとだされたことは未だかつてなかったことで、米議会がこれまで決めてきた法律や、チェック・アンド・バランスの政治システムに違反するものだ」と厳しい言説を展開している。

2016年11月の大統領選で、トランプが大統領になることが決まった直後、3人の精神科の大学教授が連名で次のような言説を展開している。

「誇大性、衝動性、軽蔑や批判に対する過敏性、また空想と現実の区別がつかないといった精神的不安定さがみてとれる。大統領としての巨大な責任を担うことができるのか、その適性が疑問視される」

こうした精神科の専門家がトランプに警鐘を鳴らしているのである。最初の4年間はなんとかやり過ごすことができたが、今後の4年間は甚だ疑問である。

「アメリカ湾」は受け入れられるか?

Executive Residence - Wikipedia
photo courtesy of the White House

ここまで横暴な米大統領がいただろうか。大統領が行政権を握っていることは誰もが知る。ただ、それは常識範囲内のことであって、独断でメキシコ湾をアメリカ湾に改名するという大胆な行為はそう簡単に許されるものではない。

Gulf of America' arrives on Google Maps | CNN Business
Image from CNN

アメリカ湾への改名は昨年からトランプ氏が言い続けてきたことだが、 2月9日を「アメリカ湾の日」に制定すると布告。この日、トランプ氏は現場海域の上空を飛行し、「メキシコ湾として知られていた海域は消し去ることのできない米国の一部だ」と発言して ご満悦の表情をみせた。グーグルマップはすでにトランプ流にならってアメリカ湾に改名した。

メキシコ湾という名称(スペイン語:golfo de México)は1550年の世界地図に初めて登場している。17世紀と18世紀には「メキシコの入り江」という表現も使われているが、アメリカ湾という表記はもちろん使われたことがない。500年近くも使われてきた名称を一人の大統領によって簡単に変えられていいものだろうか。

ロイター通信が行った世論調査では回答者の70%が改名に「反対」。25%だけが「賛成」だった。

トランプ流の恫喝外交

トランプ政権が発足してからまだ2週間ほどしか経っていないが、すでにトランプ氏らしい横暴さが露見している。昨日、当ブログで記したように(トランプは貿易戦争に突入した?)、 トランプ氏はメキシコ、カナダ、中国の3カ国からの輸入品に高関税を発動する予定だったが、直前になってカナダとメキシコへの関税発動を1カ月間停止すると発表。中国への発動の有無は24時間以内に協議するとした。

トランプ氏が発動直前で「ドタキャン」したのは、「恫喝外交」が功を奏したからだと思っている。トランプ氏は当初からカナダとメキシコに25%という高関税を課せば相手側が折れてくると踏んでいたはずで、思惑通りの展開になったということである。このアプローチは英語で「ハードスタンス (強硬姿勢)」といわれるもので、強くプッシュすれば相手は折れてくることを見越した動きと捉えられる。

そもそもトランプ氏が高関税を課すことにしたのは、隣国から薬物のフェンタニルや不法移民の流入が止まらないからで、それは隣国に多大な責任があると考えていた。メキシコのシェインバウム大統領はトランプ氏との電話会談で、1万人の兵士をすぐに国境に派遣することを約束し、トランプ氏の要請に応えている。バイデン政権の時にそれをしなかったのは、バイデン氏を脅威と感じていなかったからと言わざるを得ない。

またカナダのトルドー首相もトランプ氏との電話会談で、13億カナダドルの国境警備計画を告げただけでなく、フェンタニル対策の責任者を任命することを約束している。結果的にトランプ氏の恫喝外交がいい結果を生んだわけで、トランプ流はこれからも多用されると思ったほうがいい。今週7日に行われる石破・トランプ会談で、いったい何がでてくるのだろうか。

トランプ政権の女性報道官

米時間28日にトランプ政権の新しい報道官が、ホワイトハウスの記者室で定例の記者会見を開いた。ホワイトハウスの報道官といえば、政権の顔であり、大統領を代弁する重要な役回りを担う人物である。トランプ氏はそのポジションにキャロライン・レビット氏(Karoline Leavitt・27)という、これまでの報道官としては最年少で、しかも女性を選んだ。大変結構なことかと思う。

Karoline Leavitt - Wikipedia
photo courtesy of Wikipedia

トランプ氏は第一期にもサラ・サンダーズ氏という女性報道官(2017年-2019年・当時34歳)を任命しており、それまで男性が務めてきた報道官という重要な役回りを女性に託したという点で、貴重なことかと思う。トランプ氏という共和党本流の大統領であれば、保守的な男性を選びそうなものだが、明敏で才識がある女性を選んだという点で、個人的には評価したい。

レビット氏は米東部ニューハンプシャー州アトキンソンという人口1万人にも満たない小さな町で生まれ育っている。カソリック教で、父親はアイスクリーム店を営んでいた。同州にあるセント・アンセルム大学在学中にフォックス・ニュースやホワイトハウス記者室でインターンを経験。そして22歳の時に連邦下院議員選挙に出馬する。選挙には敗れたが、その動きがトランプ氏の目にとまり、2024年に同氏の大統領選の広報担当者として採用される。そしてこれからはホワイトハウスの報道官である。

前述のサンダーズ氏は報道官を辞めたあと、アーカンソー州の州知事になっているが、レビット氏は「将来は大統領」という夢を抱いていてもおかしくない。日本でもこうした有能な女性がでてきてはいるが、女性の側だけでなく男性側が胸襟をひらいて受け入れていく必要がある。