トランプ版、軍事大国へ

239兆円という金額を聞いて、皆さまは何を思われるだろうか。

実は日本の2026年度の国家予算は約122兆円なので、239兆円という数字はほぼ倍にあたる。米トランプ政権は3日、2027会計年度(2026年10月~2027年9月)の政府予算の要望「予算教書」をまとめ、国防費が前年度比4割増の1.5兆ドル(約239兆円)になっていることがわかった。これはもちろん世界最大の軍事支出である。ちなみに、米国の国家予算は総額2兆2000億ドル(約350兆円)という巨費である。

トランプ政権が要求する国防費には、政権が提案するミサイル防衛システム「ゴールデン・ドーム」の予算や、新しい「トランプ級」戦艦を含む海軍艦艇の国内生産拡大の予算が含まれる。これは国防総省がイランとの戦争のために求めている2000億ドルの追加予算とは別枠であり、紛れもなく「力による平和」を実現しようというトランプの思惑の現れである。

政権はまた、国防費拡大と引き換えに、住宅や教育関連の一部プログラムを廃止するなど、国内各省庁の支出削減を求める方針であるという。今月1日にホワイトハウスで開かれた非公開の昼食会で、トランプは軍事支出を国家の最優先課題にしていくという趣旨の発言をしており、着実に軍事大国への道を歩み始めていることがわかる。

トランプのテレビ演説

日本時間4月2日午前10時から、ドナルド・トランプ大統領(以下トランプ)がホワイトハウスで対イラン軍事作戦についてのテレビ演説を行った。CNNで観たが、最初から自画自賛のトーンで、米軍がいかに強大であるかを説き、イランというテロ国家を許さず、核兵器の保有は断じて許容してはいけないという強い思いを口にした。

イランを「世界最大のテロ支援国家」と述べ、1カ月ほど前から開始したエピック・フューリー作戦によって「米軍は戦場で迅速かつ圧倒的な勝利を収めました。かつて誰も見たことのないような勝利」でイランは壊滅状態であると説明。そして「テロ政権を率いていた指導者たち、そのほとんどが既に死亡している」と語った。

さらに自画自賛は止まらず、「戦争の歴史において、敵がわずか数週間でこれほど明白かつ壊滅的な大規模な損失を被った例はかつてありません」と述べた。ただ容認できる発言もある。「(イラン政府が)核兵器を保有することは、到底容認できない脅威です」という下りはその通りで、イランに核兵器を持たせてはいけないというのは多く方の共通する認識。

そして演説の後半ではまた自身を褒め称える言説を披露した。

「私たちは史上最強の経済を築き上げてきました。そして今、史上最強の経済を享受しているのです。たった1年で、私たちは衰退し、疲弊しきっていた国、、、そう言うのは気が引けますが、前政権下ではまさに衰退し、疲弊しきっていたのです。それをインフレゼロで世界最高水準の経済成長を遂げた国へと変貌させました」

ただこの言説からもわかるように、トランプは何があっても自信を失わず、前を向いているということである。今日の演説ではそのポジティブな姿勢があらためて浮き彫りになった。

全米レベルの反トランプデモ

トランプ大統領(以下トランプ)に対する抗議行動が米時間28日、全米3300カ所以上で800万人以上が参加して行われた。ロイター通信とイソプス通信社の共同調査では、トランプの支持率は第2期政権誕生以来最低の36%で、市民の不満が反トランプデモという形で表面化した。

「3300カ所、、、800万人」という数字は一般市民の多くがトランプに対して強い不満を抱いているということで、いくら抗議行動に慣れている米国人であっても、「No Kings(王様はいらない)」「Arrest Them(奴らを逮捕しろ)」などと書かれたプラカードを作って町に出る行動は、忿懣が一定レベルを超えたことを意味する。

特にイランへの攻撃や移民の取り締まり、さらに物価上昇に対する不満が目立つ。生活費問題の対応への支持は25%、経済政策への支持は29%にとどまっており、支持率が低迷している。さらに、王様気取りのトランプに「No Kings」と書かれたプラカードを示し、反トランプの機運がさななる高まりを見せいてる。

ただ、大統領を辞めさせるハードルは高い。辞めさせるには連邦議会が動く必要があり、下院の過半数(218人)の議員が弾劾訴追に賛成し、さらに上院で行われる弾劾裁判で3分の2以上(67人)の議員が有罪と認めないと大統領職を奪えない。歴史上、米大統領が下院で弾劾訴追されたことは3度あるが(アンドリュー・ジョンソン(1868年)、ビル・クリントン(1998年)、ドナルド・トランプ(2019年と2021年))、いずれも上院の裁判で無罪となり、罷免(解任)は免れている。

最高裁がトランプにノー

やりたい放題ーー。

この言葉こそが今のトランプ大統領(以下トランプ)の行状を表す適語なのだろうと思う。大統領は独裁者ではないが、トランプの言動を見聞きする限りにおいて、独裁者的な要素が溢れている。それが「トランプらしさ」と言ってしまえばそれまでだが、少なくとも米国は民主国家であり、国家運営がすべてトランプ流で押し通されてはいけない。

米時間20日、米最高裁がそんなトランプに「ノー」を突きつけた。

少なくとも三権分立のなかでも司法は機能していることを示した形となった。トランプは「約70カ国・地域に10%の追加関税を課す」と表明していたが、それに対し中小企業などが原告となって提訴。一審、二審ともに違法判決がでており、今回最高裁もトランプが違法に関税を課したと判断したことで、最終的にトランプに「ノー」が突きつけられた。

トランプは敗訴しても別の形で法的アプローチを試みてくると思われるが、今回最高裁がトランプにノーを突きつけたということは、少なくとも司法分野は機能しているということであり、徹底的にトランプと戦って頂きたいと思う。

トランプ帝国主義(2)

1月6日の当欄『トランプ帝国主義(1)』で、トランプ大統領(以下:トランプ)のグリーンランドの野望について記した。トランプは先月、「グリーンランドの海岸線を見渡せば、至る所にロシアと中国の船舶がいる。我々はそこを手に入れる必要がある」と述べて、グリーンランドを購入する意向を明らかにした。

複数の国際アナリストは米国がグリーンランドに侵攻した場合、「デンマークは領土を防衛できないだろう」と指摘している。米国は同地にピトフィク宇宙基地を所有しており、すでに米兵が駐留していることから、容易にグリーンランドを占領できるとみている。

ただ今月9日、グリーンランド議会を構成する5つの政党の党首たちが、「我々は米国人になりたいとは思わない。同時に、デンマーク人になりたいとも思わない。ただグリーンランド人でいたいだけだ」と発言し、自分たちの未来は自分たちで決めるという意思を表している。これは考えてみれば当たり前のことで、自分たちが住んでいる土地を誰からも干渉されず、今後も同じ場所に住み続けたいと思うことはしごく自然なことである。

今週、マルコ・ルビオ国務長官がデンマーク政府の担当者と同問題について協議する予定で、この会談でトランプ政権が何を求めているかが明らかになるはずだが、答えは最初から「グリーンランドを買わせろ」ということなのだろうと思う。