来年の大統領選:バイデン有利の理由

今月21日に当ブログで、来年の大統領は「おじいちゃん対決」となり、面白味に欠けると書いた(やはりバイデンVSトランプになるのか)。ただ、どちらが有利かとの領域には踏み込まなかった。

今日(25日)、私の仕事場である日本外国特派員協会で、アメリカから来た大統領選のプロに会い、この点について踏み込んだ議論をした。ズバリ、彼はバイデン氏に決定的なアドバンデージがあると言った。

米有権者はもはや「おじいちゃん対決」になることを受け入れざるを得ず、二者択一という状況が避けられなくなると、高齢であるということは争点でなくなるという。バイデン氏は現在80歳、トランプ氏は77歳で、有権者の6割ほどはいま大統領に就任する人の上限は70歳が望ましいと答えているが、来年に限っては年齢の議論は無意味となる。

そうなるとトランプ氏が抱えている法的問題にまず関心が向けられる。共和党有権者ですら、24%がトランプ氏の法的問題の多さで「投票する可能性は低い」と回答しているのだ。これが無党派層になると64%が彼には一票を投じないとしておりバイデン有利となる。

さらに、バイデン氏は大統領に就任以来、超党派インフラ法を成立させ、全米の道路、橋、鉄道の補修、また高速インターネットの整備などを実現させてきた。また銃の安全対策を強化する銃規制法案を28年ぶりに成立させており、共和党議員からも賛同をえている。

長年米国選挙をみていると、いつの時代にも選挙の明暗を分けるのは中産階級の判断であることがわかる。トップダウンの決定ではく、「ミドルアウト」の手法を使えるのがトランプ氏ではなくバイデン氏なので、来年は「バイデン有利」で動くのではないかというのが彼と私の一致した見解だった。

やはりバイデンVSトランプになるのか

来年の大統領選投票日(2024年11月5日)まであと1年と少しになった。日本でも散発的に大統領選の報道はあるが、海外ネタはいまイスラエルとハマス、さらにウクライナのニュースに大きくウェイトが乗っているので大統領選関連記事は少ない。

一言で選挙の動向を述べると、「バイデン対トランプの戦い」ということになる。長年、大統領選を追っている者にとっては興味が削がれるほど面白みのない対戦であり、相手が決まってしまっているため、来年初頭からはじまる予備選の必要性がないといえるほどである。

民主党は現職バイデン氏の一強という流れで、いまから他候補が立候補しても時間的に厳しい。ロバート・ケネディ・ジュニア氏が唯一の対抗馬と目されていたが、今月9日に独立候補になったため、民主党では著作家のマリアン・ウィリアムソン氏が唯一のライバルになった。最新の支持率を眺めると、バイデン氏の70%に対し、ウィリアムソン氏は10%と低迷しており、ほとんど期待はもてない。

一方、共和党の方はトランプ氏が59%でトップ。2位にはフロリダ州デサンティス知事と元国連大使のニッキー・ヘイリー氏が8%の同率で2位。以下、元ニュージャージー州知事のクリス・クリスティー氏、前副大統領のマイク・ペンス氏、実業家のビベック・ラマスワミ氏が共に3%で並んでいるだけで、あとの候補は支持率1%前後で振るわない。

もちろん、あと1年の選挙期間があるので何があるかわからないが、このままいくと「おじいちゃん対決」になり、米国らしい「夢のある未来」を描けるような選挙ではなくなる。それが何よりも残念である。

トランプの支持率がいまだに高い理由

アメリカ大統領選の予備選(アイオワ州コーカス:2024年1月15日)が始まるまでにはまだ時間があるが、選挙活動はすでに活況を呈している。その中でも、共和党から出馬しているドナルド・トランプ氏の支持率が依然として同党ではトップで、このままの流れでいくと来年11月の投票日にはバイデン対トランプという「おじいちゃんの戦い」になる可能性が高い。

民主党の現職バイデン氏が再選を望むことは年齢を考慮しても「アリ」だろうが、共和党が再びトランプ氏を代表候補に推す意図がどうしても解せないのだ。これまで数々の暴言を吐いてきた人物であり、多角的に大統領としての適性を考えたときに、私の中には不適任という答えしかない。

それではなぜ共和党員たちはトランプ氏を担ぎ上げようというのか。最新のロイター通信の世論調査結果を眺めると、共和党指名争いで「トランプ支持」と答えた人は52%で、2位の デサンティス・フロリダ州知事は13% にとどまっており、トランプ氏が大きくリードしている。

トランプ支持者の多くはクリスチャンの白人男性で、近年は世間の関心が女性やマイノリティーにいきがちであるため、「自分たちこそが偏見の被害者である」との思いを強くしている。この思いこそがトランプ氏の政治家としてのキャリアのスタートで、白人男性の被害者意識がどれほどトランプ氏をもちあげているかは日本にいるとなかなか理解しづらい。

共和党有権者の多くがトランプ氏の非難を避けているということもある。ある世論調査では、回答者の3分の2は「白人男性こそがいまの米国ではもっとも差別されているグループ」と答えているほどだ。それを代弁してくれているのがトランプ氏なのだという。

さあ、トランプ氏はどこまで突っ走れるのだろうか。

もう一人の米大統領候補

来年11月の次期大統領選投票日までずいぶん時間はあるが、米選挙には選挙期間が設けられていないため、すでに何人もの候補が出馬を表明し、選挙活動をおこなっている。

民主党は現職ジョー・バイデン大統領が再選を目指しているが、なにしろ80歳という年齢なので、今後1年半の間に再選を辞退する可能性もある。その機会をうかがうように、民主党からはロバート・ケネディ・ジュニア氏(69)、作家のマリアン・ウィリアムソン氏(71)が出馬している。実はもう一人、私が注目している人物がいる。

まだ出馬表明をしていないので、候補とは呼べないが、今後出馬する可能性が高いと踏んでいる。その人物とはカリフォルニア州知事のギャビン・ニューサム氏(55)である。2003年にサンフランシスコ市長に当選し、07年には72%という高い得票率で再選を果たした。

その後、同州の副知事を務めたあと、2018年選挙で州知事に当選した民主党の期待の星である。

file photo

現在はバイデン氏の再選に助力しているが、ニューサム知事をよく知る関係者は「大統領を狙っている」と述べており、バイデン氏に何かあればすぐに出馬する意向があると言われる。2024年に挑まなくとも、その次の選挙にでてくる可能性はかなり高いと読んでいる。

「比較的近いうちに(再選への出馬を)発表するつもりだ」

米バイデン大統領が再選への意向をかためたようだ。米時間14日(金)に訪問先のアイルランドで、記者団に告げた。以前から2期8年を務めるつもりであると言われていたが、ようやく正式に表明することにしたようだ。

これで現段階では2020年と同じ「バイデン対トランプ」の戦いになる形勢になってきた。バイデン氏は1942年11月生まれで、すでに80の大台に乗っているが、自分ではまだ大統領職をこなせると思っているようだ。

確かに80歳でも元気ではあるが、米国の大統領という重職を86歳まで本当にこなせるのか、私は以前から疑問視してきた。すでに高齢による心もとなさは随所に見られる。本人は本当に2期目の最後まで大統領という世界トップの行政職を務められると思っているのだろうか。

ホワイトハウスにいる限り、職務の面だけでなく生活全般においても至れり尽くせりの環境ではあるが、緻密で冷静な政治判断をくだせるのか疑問である。次の大統領選で再選されても、カマラ・ハリス副大統領(58)があとに控えているとの思いがあるから再選に挑むのか。

もうそろそろ若い候補に譲るべきではないかと考えている。