手術中の状況は、全身麻酔で意識がなかったのでまったくわかりません。臀部の手術なので、手術台にうつ伏せになって待機するのかと思っていましたが、仰向けのまま麻酔で意識を失い、気づいた時にはまた仰向けでベッドに寝かされていました。意識を失ってから、躰を反転させられたのだろうと思います。
ここで、予想外のことが起きました。
以前、全身麻酔であっても、麻酔が切れたあとはかなりの痛みに襲われるという話を聞いていましたが、術後痛みはまったくなかったのです。なにしろ腫瘍はピンポン玉サイズです。患部は包帯で覆われていたので、どれくらい切られたかはわかりませんが、全身麻酔のあとに痛み止めが効いていたとしても、かなりの痛みは避けられないだろうと覚悟していました。けれども、チクリともしないのです。これが現代医療というものなのか・・・。そのあと数日たっても、患部に痛みは走りません。
私は最終的に何針縫われたのかを知りたくて、執刀してくれた先生に訊きました。先生は「すべて順調でした」と、まず手術が滞りなく行われたことを述べます。私が「何針縫ったのですか」と再び訊くと、これまた目を開かせるようなことを述べます。
「近年は何針縫ったという言い方はあまりしないのです。というのも、傷口の中で細かく縫って、そのあと表皮を縫うからです」
久しく病院で手術をしたことがなかったので、的はずれな質問だったようです。術後、傷口が開かないように動きが制限されましたが、ベッドから降りて自分でトイレにいくことはできました。その時は輸液を点滴スタンドにぶらさげて移動しなくてはいけません。「これは典型的な入院患者の絵だな!」と思うと思わず笑みがこぼれました。(続)