今月20日にトランプ新政権がスタートする。過去に大統領選で破れ、再びホワイトハウスに戻った大統領にグローバー・クリーブランド氏(第22代と第24代)がいるが、トランプ氏は返り咲きとしては2人目である。続けて2期8年を務めるよりも、距離をおいて大統領職を考察できるという点でプラス要素が考えられるので、トランプ氏には1期目よりも精到な執務を行なってほしいものである。
すでにさまざまなところでトランプ新政権の政策が論じられているが、私が個人的に強い関心を寄せているのが税制である。個人に限らず法人でも、基本的に税率がさがって減税措置がとられれば嬉しいが、国家財政を考えると歳入が減るということなので一長一短である。政権発足前に発表されているトランプ税制によれば、個人の所得税も法人税も下げられることになっている。
法人税は現行の21%から20%に引き下げられるが、米国内で生産を行なっている企業に対しては15%までの税率が適用される。トランプ氏は先月、ニューヨークで公演したときに、「減税によって経済成長を後押しする」と強調。ただ減税によって税収が減るため、政府にとっては痛手となる。減収分はどうするのか。
ここまででわかっているのは、関税を上げて減税で穴埋めをするということだ。一律関税として輸入品に10%から20%の税率を課す。中国製品に対しては60%という数字がでており、政権発足後の米中貿易戦争が懸念されている。トランプ氏の意図する税率が施行された場合、平均関税率は現行の2%から18%近くまで上昇する(米ワシントンのタックス・ファンデーション)とみられている。
関税を課すかどうかの判断は、米国では連邦議会がおこなうが、トランプ氏は議会の承認なしで行うつもりで、すでに「オレオレ流」がでてきている。米国が他国の商品に関税をかけたばあい、他国からの報復関税が待っていることも考慮しなくてはいけない。トランプ氏らしいと言えばそれまでだが、他国への配慮も政治家には必須である。