アメリカと銃

アメリカのメイン州で現地時間25日、精神を病んだ40歳の男が銃を乱射して18人を殺害し、13人に怪我を負わせる事件が起きた。ロバート・カード容疑者は米軍予備役兵で銃の扱いにはなれていた男だった。

「またか」と多くの方は思ったかと思う。今年に入り、米国ではすでに500件以上の銃撃事件が起き、600人以上が亡くなっている。銃規制が叫ばれてはいるが、銃を使った事件は減らず、むしろ増加傾向にある。

私がアメリカに住んでいた時、最初に取材をした銃撃事件は1992年にルイジアナ州バトンルージュ市で起きた日本人留学生射殺事件だった。名古屋市から交換留学生としてきていた服部剛丈(はっとり・よしひろ)君(当時16歳)が、ロドニー・ピアーズという男に44口径マグナムで至近距離から射殺されたのだ。

服部君はその日、ハロウィーンパーティーに参加するために友人と出向いたが、訪れる家を間違えてピアーズ家のドアを叩いた。ピアーズは「フリーズ(止まれ)」と言ったが服部君は意味がわからず、そのままピアーズのほうに近づいて撃たれてしまった。

アメリカにはいま4億7000万丁以上の銃があると言われている。10年ほど前は3億丁と言われたが、過去20年増加傾向にある。過去2年ほどは減る傾向にあるが、それでも毎年あらたに約1600万丁が買われている。服部君が殺害された2年後にブレイディ法という銃規制が施行されたが、10年間の時限立法だったため、2004年に失効している。

私はアメリカに四半世紀もいたので、アメリカ人が銃を持ちたがる理由がよくわかっているつもりだ。ヒトコトで言えば「自衛のため」なのである。犯罪者の多くが銃を手にしていれば、「自分も手にして防衛するしかない」と自然に考える。犯罪が増えれば増えるほど「銃を用意しなくてはいけない」との思いに駆られる。入手も極めて簡単なため、一応手元に置いておきたくなるのだ。

この流れを止めることは容易ではないが、法律で規制すると同時に、銃を手放すことによってより安全な社会をつくることができるといった考えを流布させる必要がある。