なんとしてもアメリカへ

日本ではあまり大きな報道になっていないが、アメリカとメキシコの国境付近にいま、1日1万人ほどの移民が集まってきている。多くは不法移民で、メキシコだけでなく、コロンビアやパナマ、グアテマラなどからアメリカに入国するためにやってきている。

私が25年住んだ首都ワシントン周辺にも多くの中南米人が住んでいて、小さな町ができているところもある。何度となく彼らと接触し、取材もしたことで、彼らが何故アメリカを目指してやってくるのかはわかっているつもりだ。

彼らにしてみるとアメリカはある意味で夢の国で、稼げると同時に、自分次第で社会的な成功をつかめる場所と捉えている。それは祖国よりも生活状況が確実に上向くということでもある。逆にいえば、祖国では経済的にかなりの貧窮を経験してきているということで、「現状からの脱出」の最終到達点がアメリカなのだ。

国境には場所にもよるが、高さ数メートルの鉄製の柵がある。それでも彼らはさまざまな方法でそこを越えてくる。何百キロも歩いてきて、柵ひとつで自分の目的を諦めたりしない。不法であるため、米国側で待ち構える警察官に拘束されることも少なくないが、それでも諦めたりはせず再び越えてくる。

もちろん不法入国は声を大にして勧められるものではないが、彼らの気持ちに思いをはせると「いいよ。越えてきて」と声をかけたくもなる。日本ではこうした状況に直面する人がいないだけに、少しだけでもご理解いただけると嬉しくなる。