悲観的な中国の未来

いまフランスの人口学者エマニュエル・トッド氏の『老人支配国家 日本の危機』(文春新書)という本を読んでいる。トッド氏は人口学者であるが、いまの世界を歴史的、統計的な立場から論じている学者で、独自の視点がいつも興味深い。最近も月刊文藝春秋で「日本核武装のすすめ」という論文を書いている。

『老人支配国家 日本の危機』でもハッとするような記述に出会う。同氏はこう書いている。

「中国が、今後、「帝国」になることは、政治的にも経済的にもないでしょう。中国の未来は悲観せざるを得ないという点で、人口学者は一致しています」

多くの方は中国はすでに帝国になりつつあると思われているかもしれない。そうした考え方をトッド氏は否定する。その理由は「少子化と高齢化が進んでいるから」と述べる。特に出生児の男女比が、男子118人対女子100人という点に注目している。通常は106人対100人であるという。

これは中国では妊娠中に女子であることがわかると、選択的堕胎が行われていることを意味している。中国社会では女性の地位の低さがいまでも指摘されており、伝統的な価値観が流布している。さらに若いエリートが国外に流出しているため、中国経済はいま内需が弱く、輸出依存の脆弱な構造になってもいるとトッド氏は述べる。そして「砂でできた巨人」と形容する。

その流れで、日本は思い切った少子化対策を打つことが大切だと書く。「子どもは宝」とはよくいったもので、子どもこそが将来の国家を支える存在なので、子どもへの投資は将来への投資になることをすべての日本人は意識すべきかもしれない。