新型コロナ(10):複雑すぎる現金給付、アメリカとの比較

ヒトコトで言えば「役人らしい細かさ」ということになる。いや「役人らしい厭らしさ」と言うべきかー。

一世帯当たり30万円という数字がでた時に、多くの方は「30万円もらえる」と考えただろう。ところが自己申告制で、しかも収入が一定のレベルまで減少した人だけが対象になるという。

たとえば月給17万円の独身サララーマンの収入が9万円になっても支給されない。半額以下でないからだ。今回の現金給付で本当に対象になる人は約20%に過ぎないともいわれる。

「本気か?」「これで現金給付と呼べるか?」が本音である。

ここでアメリカの現金給付の話をしたい。「またアメリカか」と思われるかもしれないが、私はずっとアメリカにかかわってきているのでお許しいただきたい。

トランプが3月27日に署名したコロナ救済法案の中に、1人につき1200ドル(約13万円)の現金給付という項目がある。申請はいらない。黙っていれば小切手が送付されてくるのだ。小切手は銀行にいって自分の口座に振り込めばいいだけである。

この条件というのは、昨年の年収が7万5000ドル(約810万円)以下という1点である。もちろんパートナーがいる人や子だくさんの家族の世帯主などは給付額が変わるが、基本的に年収810万円以下の人であれば無条件で13万円がもらえる。アメリカらしい寛大さである。

安倍がやるべきことはこうした簡素化された現金給付のはずだ。しかもアメリカの方は法案成立が3月27日で、それから3週間以内にほとんどの人が小切手を受け取るという(財務長官ムニューシン)。社会がコロナで揺れに揺れている時だけに、国民を笑顔にする動きである。

一方の日本は官僚がルールを複雑化して、むしろ「支給したくありません」という思いが潜んでいるかのようだ。日本の行政はいまでも「アメリカを手本にして」という姿勢が内在しているはずで、今回の現金給付もトランプ政権にならってということだったかもしれない。

安倍が現金給付を決めたのはトランプの法案署名の1週間後の4月3日である。手本にするなら給付方法も徹底的に真似してほしい。(敬称略)