ニューヨークのテロリスト

昨晩、フジテレビのインターネットTVで15分ほどニューヨークのテロ事件について話をした。

実行犯のアフマド・カーン・ラハミ容疑者(28)はすでに逮捕されたが、男の背後にイスラム国やアルカイダ系過激派組織などのテロ集団があるかは現段階では分からない。

素性を探ると、単独犯の可能性が高いようにも思える。ただ過去5年間で、生まれ故郷のアフガニスタンとパキスタンに長期間滞在しており、その時にテロ集団と接触があった可能性はある。

男は7歳の時、家族と共にアフガニスタンからアメリカに亡命している。父親はニュージャージー州のエリザベス市というニューヨークからほど近い所でフライドチキンの店を経営し、男もそこで働いていた。

高校まではTシャツにジーンズという普通の服装だったらしいが、アフガニスタンとパキスタンの旅から戻ると立派なヒゲをたくわえ、シャルワール・カミーズという民族衣装を身につけるようになった。そして毎日礼拝するようになる。

小学校からアメリカで生活していれば英語はネイティブの域にあるだろうし、アメリカ文化にも馴染んでいたというより自分の皮膚の一部のようになっていたはずだ。

しかし宗教はイスラムである。自宅ではアフガニスタンの言語であるパシュトー語かダリー語を話していただろう。そうすると男は、近年、アメリカ国内で偏見の眼で見られがちな、ヒゲをはやしたイスラム教徒の男というカテゴリーの中に入ってしまう。

すでにアメリカに帰化したアメリカ人であっても、自身の思いと他人の思いにはズレが生じる。アメリカ社会への帰属意識はあっても、周囲が自然に受け入れてくれない状況が訪れていたのではないか。

そしてアフガニスタンとパキスタンに滞在したことで、祖国への思いとイスラム教への信義の意識が強まる。イスラム教過激派の思想に同調していくのは、むしろ自然な流れかもしれない。

父親の店はもともと24時間営業だったが、周辺住民からの騒音の苦情で、市政府が「午後10時閉店」の通達をだす。父親は通達が営業妨害にあたるとして、市政府を訴えるが負けてしまう。

さまざまな要因が合わさり、白人中心でまわるアメリカ社会への憎悪が増幅したとも思える。

もしかするともっと明確な意図があったのかもしれないが、ラハミ容疑者は爆弾テロという卑劣な犯行を決行することになった。当事件は再び、イスラム教徒とのつき合い方を考させられる事件となった。