北朝鮮の素顔

19日午後、金正日の死のニュースを耳にした時、最初に脳裏に浮かんだのが「暗殺か?」であった。

死去の知らせと同時に心筋梗塞という言葉が発表されていたが、まず他殺を疑った。だが、軍事クーデターによる暗殺であれば、軍部による政権掌握が行われなくてはいけない。それは対外的にむしろ公言すべきことで隠す必要はない。また政権内部の人間による暗殺であったとしても、秘密裏に処理する必要性は乏しい。

問題は今後の政権委譲である。3男の金正恩が後継者として指導者になる流れはすでにできているが、現在、人民軍内部の金正恩に対する信頼度は極端に低い。それは今春、平壌周辺から黄海、板門店にいたる旅をした時に耳にした労働党関係者の本音からもわかる。(平壌壌から板門店まで、対向車はわずか10台)

死亡発表後1日で、世界中に北朝鮮の専門家がこんなに大勢いたのかと思えるほど、メディアにさまざまな名前が登場する。いろいろ読むが、「ほぼ確実にこうなる」と断定できる人はいない。

それは他国政府でさえも北朝鮮内部に諜報員(スパイ)を擁していないからだ。アメリカでさえも、金政権にスパイは送り込めていないだろう。イラクでもそうだった。諜報活動はそれほど難しい。

半年前に平壌に行って驚いたのは、金正日より父親の金日成のほうが100倍も慕われているということだった。100倍というのは個人的な印象である。ただ金日成は北朝鮮国民にとって「ほとんど神」であるが、息子の金正日は「将軍さま」、金正恩にいたっては「ハナタレ小僧」という扱いだろうかと思う。

                                  

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                       平壌市内にて

「金正恩はどういう評価なんですか」

「ゼンゼン、ゼンゼンだめ。まだ若いから」

平壌市民も酒が入れば本音を漏らすのである。

昨日からのニュース映像で、大げさとも思えるほど嘆き悲しむ北朝鮮国民の姿が映し出されている。韓国にはプロの「泣き屋」がいて、葬式の時にわざと大げさに泣いてその場を演出することがよくある。北朝鮮でも同じなのだろうとの思いでテレビ映像を見ると、思わず笑みがこぼれてしまう。

いずれにしても、かの国の究極的な課題はこれからどうやって民主国家への道を歩むかである。