オバマの密約

デイビッド・プロウフという男がいる。

昨年、オバマを大統領に「仕立て上げた男」と形容してもいい人物である。選挙対策本部委員長を務めたプロウフは選挙後、ホワイトハウスに入らずに政治コンサルタントにもどった。その彼が『The Audacity to Win(仮訳:勝つための希望を抱いて)』という本を出版した。

        

      

プロウフが08年大統領選についての本を執筆中という話は聞いていたので、楽しみにしていた。まだ本は手にとっていないが、彼が昨年何にもっとも気をつかい、選対をどう動かしたのかなど、私には興味のつきないことがつづられているはずだ。

その中で、いまアメリカのメディアを騒がせているのがヒラリーの処遇である。昨年6月にヒラリーとオバマの予備選での決着がついたあと、オバマは真剣にヒラリーを副大統領にするつもりだったとプロウフは書いている。けれども彼をはじめ、選挙スタッフが反対したため国務長官にしたという。

スタッフが反対したのは、ヒラリーを副大統領にすればビル・クリントンも一緒にホワイトハウスについてくることが厄介だったからというのが理由だ。

私はヒラリーが敗北宣言をしたあと、副大統領になる可能性が大きいと考えていた(参照:ヒラリーの敗北宣言 )。それは長年大統領選を取材してきたジャーナリストとしての勘なのだが、二人が互いの携帯電話の番号をスピードダイヤルにして連絡をとっていただけでなく、二人の一挙手一投足が選挙中盤から「タッグ」といえるほど緊密で、どちらが大統領になっても副大統領か重要閣僚としてのポジションを与える「密約」を交わしていたように思えたからだ。

真実は二人が公職を退いたあとに明かされるかもしれず、それまではじっと待つしかない。(敬称略)