ある書店の倒産(2)

先日のブログで記したように、全米第2位の規模を誇る書店ボーダーズが倒産した(ある書店の倒産 :詳細版)。

                                      

   

                                        

今ある600店以上の店舗すべてが閉鎖されるわけではないが、200店ほどが閉じられ、再生に向けて新たなスタートが切られる。もちろん平坦な道のりではないし、実質上の倒産である。

インターネットの時代に入り、町の書店が苦戦していることは子供でもわかる。少なくとも過去10年、経営陣はネット時代にどう利益を上げていくかを策定すべきだったが、実践できなかった。むしろボーダーズは逆の流れに進み、書店数を増やして国外での店舗展開を行った。経営判断ミスだった。

ボーダーズが潰れたことで、ネット書店のアマゾンと業界最大手のバーンズ&ノブルの両横綱に書店業界が席巻される図式ができた。

ボーダーズの債権者はペンギン・パットナムをはじめ、サイモン&シュースター、ランダム・ハウスといった大手が含まれる。それぞれがボーダーズに対して30億円前後の貸しがあり、アマゾンとバーンズ&ノブル以外、これからガタガタと音をたてて崩れていく憂慮さえある。

フォレスター・リサーチが昨年発表した報告書は、2025年までに新刊本の4分の1は電子書籍になると記している。たぶん電子書籍の流れはもっと早い。

昨年のクリスマスに電子リーダーをプレゼントされたアメリカの子供たちの中には、もうゲームはやらず、テレビも観ず、ひたすら電子リーダーで本を読むようになった小学生がいるという。

歴史を振り返ると、時代が代わる移行期というのは「つらい時期」ではあるが「楽しい時期」でもある。抵抗するだけ無駄ということである。

CEOの選び方

アメリカの大手企業CEOの選び方に変化が生まれている。

「企業トップを誰に継承させるか」は大企業だけでなく中小企業にとっても大きな課題だ。日本の中小の場合、約7割が息子や娘といった親族が後継者になる現実がある。それが企業にとって最善の選択であるかの疑問は残るが、アメリカ大企業の場合、CEO在任期間が過去10年で8.1年から6.3年へと早まり(Booz&Co社の報告書)、退任年齢も53.2歳と若くなっている。企業も時代の変化に合わせざるを得ない環境になってきている。

それでは新しいCEOはどういった形で選ばれるのか。

取締役会が新CEOを決定する過程で近年、考慮される要件は国際畑の経験者で、ファイナンスや製造分野よりマーケティングや営業分野での経験があること。複数の業界で経営に携わったエネルギッシュで若い人というものだ。

好例がキャンベルスープの現COOデニース・モリソン氏で、今年8月にCEOになる予定だ。彼女のキャリアは世界最大の一般消費財メーカー、プロクター&ギャンブルを皮切りに、ペプシコ、ネッスル、ナビスコ、クラフト・フーズと渡り歩いた後、キャンベルスープに移った。まだ50代の若さで、過去7年は同社の世界市場の営業と顧客管理の社長を務め、前述の要件を兼ね備えている、、、、(続きは堀田佳男公式メールマガジン『これだけは知っておきたいアメリカのビジネス事情』)。

オートパイロット

ピープルズパワー!

エジプト人には本当に「おめでとう」という言葉を捧げたい。エジプトから見えるアフリカの現実 で述べたように、ムバラクは辞任し、独裁政権は幕をおろした。だが彼らが本当に熟考し、行動に出なくてはいけないのはこれからである。

いまは軍部が権力を掌握している。市民から一応敬意を払われている軍が、ムバラクの擁護にも打倒にも積極的に加担しなかったことで無血革命が達成できた。ただ反ムバラク派の代表的リーダーの顔が見えない。IAEA(国際原子力機関)の前事務局長のエルバラダイは国をリードすることに興味を示さない。

チュニジアに始まるアフリカの革命の特徴はアメリカのCIA(中央情報局)が大きく関与していないことだ。「していない」と表現するより「できなかった」と記すべきだろう。アメリカの世界に及ぼす影響力が年々、小さくなっていく様子が手にとるようにわかる。

1979年のイラン革命時、CIAはテヘランへ使者を送ってホメイニを亡命先のパリからイランに帰国させた。CIAは途上国のトップの首をすげ替えることもできた。イラン革命は彼らが絵に描いた通りの革命であった。これは後にイラン外務省の政府高官を父に持つ男から直接聞いた話である。

しかし「エジプト革命」はCIAも指導者もいない市民革命として今後歴史に残る。フェイスブックがきっかけにはなっただろうが、実際に動いたのはエジプト人たちである。アメリカ政府は民主主義を根付かせようとイラクやアフガニスタンで何兆円ものカネを割いているが、国民の心を動かすことにはなっていない。

この点で日本はどうだろう。すでに民主主義は広く認知され、どこに行くにも行動の制約はないし、言論の自由は保証されている。だが、普通の会社員が積極的に政治活動に参加したりはしない。法律で認められた権利であっても、公に出ていく人は稀である。

それは政治体制とは別次元の社会規範があるからである。個々人の中で自己制御が強く働いている。個人だけではない。グループや団体、会社という組織に属していれば、そこでの規律もある。言い換えれば、それが日本を律する国にしている。

この国は官僚から一般市民にいたるまでオートパイロットが働いているのである。少しでも軌道から外れる行動や考えは、ほぼ修正されてしまう。それは潜在下で行われるので、大企業の社員が反政府デモを首謀しようなどと思わない。

テレビカメラに映り、新聞に顔写真が出るような行為は慎まれる。それが法的に認められた行動であってもだ。行動に出ると会社の上司は言うかもしれない。

「あれはちょっとまずいんじゃないの」

「自由な政治活動は憲法で保証されていますから、いちゃもんをつける方がおかしいです。会社員であっても、自分の信じることはやります。会社には迷惑はかけません」と言い返しても、波風を立てたということで周囲に釈然としないものを残す。そこまで冒険をする人はいなくなる。

独裁者によるクーデターでも起きて言論統制が布かれれば反政府運動が起きるだろうが、普天間問題や債務超過、社会保障問題が解決できないくらいではデモさえも起きない。

これを平和というのかどうかは疑問である。(敬称略)

ある書店の倒産

崖っぷちから向こう側へ―。

アメリカの小売書店業界第2位のボーダーズが今週中にも倒産する可能性が高い。日本でいえば、紀伊國屋書店に次ぐ業界2位のジュンク堂書店が潰れることに等しい。

個人的には、25年間住んだ首都ワシントンの店舗を随分利用させてもらったので、連邦破産法第11条の申請というニュースは残念である。しかしビジネスに感傷は必要ない。すでに紙の時代は過ぎたと言われて久しい。単行本だけでなく、新聞や雑誌も含めた紙媒体の上り調子ならぬ「下り調子」は続いていた。ある意味では判り切った結末だ。

アメリカで起きたことが10年後には日本でも起こると言われて久しいが、近年はそのサイクルが早まっている。近い将来、日本の大手書店が倒産というニュースは何も驚くべきことではない。

けれどもすべての書店が傾いているわけではない。業界トップのバーンズ&ノブルは健全な経営体制を維持している。それであれば、ボーダーズの経営戦略のどこかにミスがあったと考えてしかるべきだ。ビジネス上の意思決定に間違いはなかったのか、、、、(続きは堀田佳男公式メールマガジン『これだけは知っておきたいアメリカのビジネス事情』)。

エジプトから見えるアフリカの現実

「国外ニュースはエジプトにハイジャックされ続けている」

ヨーロッパからの東京特派員が嘆いた。カイロでの反政府デモが起きてから、東京発のニュースは本国で使ってもらえないという。無理もない。エジプトでの騒ぎがなければ、相撲の八百長事件や新燃岳噴火のニュースが伝えられていた。エジプロだけでなくイエメンやヨルダンの反政府運動も勃発しており、しばらく中東の民主化運動から目が離せない。

私がギザのピラミッドに腰を下ろしたのは何年も前のことである。ラクダの背中に客を乗せて法外なカネを取るあこぎな商売が鼻につき、ピラミッドやスフィンクスの印象が一気に悪くなった記憶がある。

夕刻になると、ピラミッドの周辺に張り巡らされた柵に鍵がかけられて中を歩くことさえできない。そんなことは行ってみるまで知らなかった。しかし、ラクダ屋のオーナーは「カネをよこせば柵の中に入れてやる」という。それだけではない。警備兵に賄賂をつかませなくてはいけない。

    

            

一般観光客は夕刻から朝方までピラミッドに近寄ることさえできない。日中であれば、誰でもピラミッドのそばに駆け寄って写真を撮れる。しかし、必ずといっていいほど他人がファインダーの中に入る。しかし特別な入場料を払えば、ピラミッドの壁面に夕日があたる時間帯を「独占」できる。カネでなんとでもなる世界だ。

地元ではミネラル・ウォーターを買うのでさえ、観光客と地元の人とでは値段が違う。空港の警備員からもカネをせっつかれる。「袖の下」を渡すことでコトがスムーズに運ぶ国は何もエジプトだけではないが、守銭奴と言われるムバラクの統治が30年も続いた国らしい醜態が流布している印象だ。

現地で何人ものエジプト人と知り合った。ムバラクを褒める者はほとんどいなかった。貧困と社会格差、独裁体制が自らの首を絞めることになるのは時間の問題に思えたが、ここまで来るのに予想以上に時間がかかった。それほど反政府勢力は去勢させられていた。

民主化運動で独裁政権が崩壊することは間違いないが、現政権に代わってイスラム勢力と軍部が市民の代弁者になることは望まれない。こうした状況で思い出されるのが、アフリカの小国の駐米大使とある大学教授の言葉である。

大使はこう言った。「アフリカの小国は外からの攻撃を受けると、3日で政府が潰れてしまいます。けれども、国家を再建するには10年の歳月が必要です」。そしてある教授は諭すように述べた。

「アフリカの国々で今後、本当に民主主義が機能するかどうかはわかりません。日米だけでなくヨーロッパ諸国は民主国家ですが21世紀になってますます多くの問題を抱えるようになっています。今は中国の方が政治的にも経済的にも安定している現実があります。アフリカ諸国が中国を手本にしはじめる流れがあるのです」

言論の自由や反政府運動を認めない限り、真の民主主義とはいえない。圧政の下で生きた国民であれば、抑圧からの解放を求める力が強いのは必然だ。けれども、その声をどう収束していくかは別次元の政治力が必要になる。

外交の裏舞台でアメリカがエジプトの新政権にどう関与し、反イスラエルの国家にならないようにするかが見ものであると同時に、民主化という動きがアフリカで機能するかどうかを見られる好例となるはずだ。(敬称略)