オバマ再選濃厚

アメリカ大統領選の討論会が日本時間4日、コロラド州デンバーで行われた。

討論内容は予想どおり、政府の役割の重要性を説くオバマと民間に任せた方が社会はうまく回ると主張するロムニーの言い合いだったが、「討論の見栄え」という点ではロムニーが勝っていた。

ロムニーの選対委員長から私のところにマスメールが入り、「(選挙での)勝利はもう目の前」と楽観ムードに満たされたメモが送られてきた。

第1回目の討論会でロムニーに軍配があがっても、あと2回(11日と22日)ある。討論会の出来不出来で支持率が大きく動くことはもはや少ない(初の直接対決:オバマ対ロムニー )。

1984年のレーガン再選時、民主党の候補だったモンデールは第1回目の討論会で現職レーガンを圧倒。流れを引き寄せられるかに見えたが、結果はモンデールが2度と政界には復帰できないと思えるほど惨めな負け方をする。

オバマは討論がうまくないという日本のメディア報道もあったが、4年前の予備選を忘れてしまったのだろうか。今回は準備不足以外の何ものでもない。

大統領としてホワイトハウスで寝起きするようになり、周囲に唾を飛ばしながら議論する相手はいない。というより、オバマの側近で大統領に食い下がって反論する人間はいないと考えた方がいい。

だが、2回目と3回目は徹底的にディベートの練習を重ねて復活するはずである。

しかもオバマ陣営の9月の選挙資金の集金額は約1億5000万ドル(約117億円)という記録的な額で、選挙資金総額でもロムニーに大きく差をつけており、ロムニー陣営が歓喜で舞い上がっている暇はない。

これは私見というより、客観的に選挙の流れをみての発言である。2000年の時は共和党のブッシュが接戦を制すると述べたし、04年も現職ブッシュが民主党ケリーが破って再選されると書いた(2004年10月:ブッシュ再選濃厚 )。

今年はオバマ再選濃厚と書く。(敬称略)

初の直接対決:オバマ対ロムニー

投票というのは、1人の政治家に自分がどういった期待をし、イメージを描けるかが如実に表れる場である。

オバマはすでにアメリカの行政の長として4年弱、職務にたずさわってきたので、有権者は今後の4年間をイメージしやすい。4年前に比べると、「チェンジはいったいどこへいった」とか「財政赤字は増大しつづけ、経済は依然として復調していない」という批判もある。来年早々には「財政の崖」といわれる大幅増税と歳出削減が実施される可能性もあり、不況への再突入も取り沙汰されている。

ただ先日、ロムニーが低所得者や中流層を軽視する「本音を語ったビデオ」が流出したことで、共和党の人間でさえも彼が大統領になった時のイメージを悪化させてしまった。

以来、オバマ対ロムニーの支持率は2ヵ月前の僅差から、オバマが5%ほどリードする状況に変わった。ここからロムニーが挽回することは多難である。

いまロムニー陣営が狙うのは10月3日にコロラド州デンバーで行われるオバマとの初の直接対決(討論会)である。だが、過去10年以上、討論会で支持率を回復することは少なくなっている。1960年のケネディ対ニクソンのテレビ討論時代とは違う。

というのも、インターネットの発達で有権者に流れる情報量が以前とでは比較にならないくらい増えたからだ。テレビ討論を観てどちらの候補を選ぶかを決める人は少ない。すでに支持候補を心に宿す人がほとんどだ。

ナマ番組のテレビ討論は候補者の政策や言い分の確認をする場になってきている。

となると、ロムニーが新たな追い風を背に受けることはあまり期待できない。昨夏から述べているように(オバマ対ロムニー )、オバマ有利で(再びオバマ対ロムニー )選挙当日を迎えるはずだ。(敬称略)

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by the White House

新しい英語(2)

18世紀のイギリスにサミュエル・ジャクソンという文学者がいる。

彼は詩人であり脚本家、ジャーナリスト、そして辞書の編纂も手がけていた。彼が編纂した英語辞典はのちの英語に大きな影響を与えた。というのも、言葉の意味を再考し、実際にどう使われているかを探っただけでなく、正しい用法にも踏み込んだからだ。

日本語でも時代と共に新しい言葉がどんどん生まれる。また古くからある言葉に新しい使い方が加味されたりもする。歳をとると、新しいものに対する抵抗感が強くなって新語を使わない傾向があるが、私は相手に不快感を与えなければどんどん使うようにしている。

先週、英単語で「Blip(ブリップ)」 という言葉に出会った。

以前からある単語である。テレビやラジオ業界で不適切な言葉を削除した時に使う「ピー」という音のことである。他の意味としては、レーダーのスクリーンに現れる映像も指す。インターネットの英和辞典ではその2つがでている。

手元にある研究社の英和辞典を調べてみた。12万語が収録されている英和辞典には2番目のレーダースクリーンの映像という意味だけが出ていた。

だがアメリカでは近年、日常会話の中で上記の2つとは違う意味でよく使わる。

This problem is a temporary blip.

意訳すると「これはちょっとマズイんじゃないの」という感じである。「いつもとは違うこと」というニュアンスの単語として使われている。

これからも「新しい英語」に出会った時にはご紹介していきたい。

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