下降しはじめたトランプ

メッキはすぐに剥がれるということか―。

アメリカ大統領選で7月以降、共和党レースのトップを走ってきたドナルド・トランプの勢いにかげりが見えてきた。

今月16日の共和党候補による討論会では精彩を欠いていたし、事実関係や詳細な数字は相変わらずあいまいなままだった。共和党の他候補から攻撃されると的はずれな受け答えに終始し、万人を唸らせるだけの理知的な論理を展開できない。

依然として各種世論調査ではトップを維持しているが、今後も同じレベルの支持を得られる保証はない。8月12日の当ブログで、「多くの政治アナリストは『支持率が高いのは今だけ』と評しているし、私もそう考えている。年内には失速するかに見える」と書いた通りになりそうである(アメリカの病理 )。

メキシコとの国境に万里の長城をつくるというアイデアは一時的には実に「キャッチー」な策だけれども、それによって中南米の人たちだけでなく、外国人からどれだけの嫌悪感を抱かれているのかを理解しているとは思えない。

連邦議員や州知事などではなく、成功を収めたビジネスマンにアメリカ合衆国を託してみるという国内のムードはよく理解できるが、トランプはいただけない。

元HPのCEOカーリー・フィオリーナの方が現実的な期待度は高い。もし彼女が共和党の代表候補になれば、ヒラリー対フィオリーナという女性同士の対決になる(ヒラリーの対抗馬として、共和党にフィオリーナ登場)。(敬称略)

アメリカの病理

アメリカ大統領選に出馬している不動産王ドナルド・トランプの勢いがとまらない。

多くの政治アナリストは「支持率が高いのは今だけ」と評しているし、私もそう考えている。年内には失速するかに見える。

ただ、共和党候補たちによる第1回目の討論回(8月6日)で暴言を吐いたあとも支持率はトップを維持している。というより、勢いが増した感すらある。どの世論調査でもトランプがトップである。もちろん共和党内の話で、民主党はヒラリー・クリントンがトップである。

トランプの支持率が高い理由は、他の政治家が吐かない本音をわかりやすい言葉で語っていることによる。ビジネスで成功した自信が言動にあらわれ、「俺ならこうやって解決する」という単純明快なスタイルが受けている。

個人的に、トランプが述べる話の約9割に賛成できないが、アメリカの一部の有権者の不満を代弁していることは確かである。湧き上がるエネルギーはジェブ・ブッシュの数十倍はあるような印象だ。

彼を支持するツイッターの書き込みをいくつかご紹介したい。

「(アメリカ国内への)不法移民の流入を、これまでどの政治家も阻止できなかった。彼なら本当に阻止できそうだ」(アメリカとメキシコ国境に万里の長城を築くという考えに対し)

「トランプこそが(ワシントンの)屁のように腐りきった空気を浄化できる男だ」

「メキシコ人やハイチ人、中東の人間、それにアフリカ人など、アメリカはこれまでスポンジのように彼らを受け入れてきた。彼らを自国に追い返すのが最良の策だ」(トランプの排他思想に賛同して)

こうしたトランプを推す排他的でかたよった保守思想は、アメリカ社会の中ではごく一部に過ぎない。民主党の有権者はもちろん、共和党の主流派にさえ毛嫌いされている。

これを「アメリカの病理」と呼んで差しつかえないだろう。短期的には反オバマ=反リベラルにスポットライトが当たっているということだ。(敬称略)

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Photo courtesy of Donaldjtrump.com

予想通りの16候補

 自慢のようになって申し訳ないが、6月5日の当ブログで(アメリカ大統領選:共和党からは16人が出馬か)というタイトルを打ち、その通りになった。

6月初旬の時点では10名だったが、ブログで名前を挙げた16名すべてがそろった。

ずっとアメリカ大統領選を追っていれば普通に読めることなので、何も特別なことではない。ただ日本のメディアで、私と同じ時期にすべての16候補を公表したところはない(たぶん)。

大手の報道機関は予測については非常に慎重で、間違ったことを書いた時には記者だけでなく会社の責任問題につながるので、「普通」のことしか書かない。アメリカのメディアが書けば追随する形で乗っかるだけである。

共和党の16名というのは主要候補だけで、ローカルレベルではもっと多くの候補が出馬している。大手メディアが拾わないだけだ。もちろん、名前の通らない候補が全米で支持を集めることはほとんどない。

共和党はあと1人か2人は出馬してくる可能性がある。民主党はヒラリーを含めて現在5名。 現段階でヒラリーが民主党の代表候補になる可能性は9割と述べておく。

共和党は ジェブ・ブッシュが先頭を走るが、混戦である。それでも来年の今頃はヒラリー対ジェブの対決という、あまりにも「普通」な戦いになっていそうな気がする。

アメリカ大統領選:共和党からは16人が出馬か

アメリカ大統領選まであと1年5カ月もあるが、保守派である共和党からはすでに主要候補が10名も出馬している。

元大統領ブッシュの弟であるジェブ・ブッシュはその中に入っていない。彼は6月15日に出馬してくると見られている。さらに不動産王ドナルド・トランプも共和党から参戦してきそうだ。これから出てくる候補を考慮すると、共和党は16人に達しそうである。ちなみに、民主党からはヒラリーを含めて現在まで4人。

16人というのは連邦議員や州知事、さらにアメリカ社会ですでに名前が通っている人だけで、泡沫候補も含めるとさらに増える。

たぶん日本のメディアで16人という数字を挙げ、名前をすべて列挙している媒体はないだろうから、当ブログでまず記しておく。

共和党から出馬宣言した候補(姓名のアルファベット順):

・Ben Carson ベン・カーソン(元神経外科医)

・Ted Cruz テッド・クルーズ(テキサス州選出の上院議員)

・Carly Fiorina カーリー・フィオリーナ(ヒューレット・パッカード元CEO兼会長)

・Lindsey Graham リンゼイ・グラハム(サウスカロライナ州選出の上院議員)

・Mike Huckabee マイク・ハッカビー(元アーカンソー州知事)

・George Pataki ジョージ・パタキ(元ニューヨーク州知事)

・Rand Paul ランド・ポール(ケンタッキー州選出の上院議員)

・Rick Perry リック・ペリー(テキサス州知事)

・Marco Rubio  マルコ・ルビオ(フロリダ州選出の上院議員)

・Rick Santorum リック・サントラム(ペンシルバニア州選出の元上院議員)

出馬してくると思われる候補:

・Jeb Bush ジェブ・ブッシュ(元フロリダ州知事)

・Chris Christie  クリス・クリスティ(ニュージャージー州知事)

・Bobby Jindal ボビー・ジンダル(ルイジアナ州知事)

・John Kasich ジョン・ケーシック(オハイオ州知事)

・Donald Trump ドナルド・トランプ(実業家)

・Scott Walker  スコット・ウォーカー(ウィスコンシン州知事)

ヒラリーがくる!

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Photo courtesy of Politico

いよいよヒラリー・クリントンが2016年の大統領選に出馬する。間違いなく出てくる。しかも2週間以内だ。

昨年末からヒラリーの出馬は噂されていたが、彼女の政治動向をみれば99%といえるほどの確率で出てくる。

ヒラリーの選挙戦を手伝うスタッフの顔ぶれはプロ中のプロである。しかもオバマに仕えていたホワイトハウスの補佐官たちもいて、すでに職を辞している。08年の予備選でオバマに負けた失敗は繰り返さない構えだ。

ヒラリーはすでにニューヨーク市ブルックリン区にあるピエールポント・プラザというビルに選挙本部を置くことをきめ、スタッフが事務所の契約書にサインもしている。

私はいちおうアメリカ大統領選を「ライフワーク」と言っているので興奮してしまうが、「エッ、またヒラリーが出るの?」と思われる方も多いだろう。

彼女が次期大統領になるかどうか、、、それを今後記していけたらと思っている。(敬称略)