こだわりの鮨屋に行った帰路はいつも笑みを携えている。
2年ほど前に書いたブログ(妥協したくないもの )で、 食べるもので唯一こだわっている鮨について記した。そこで銀座5丁目の鰤門(しもん)を紹介した。
日本橋店があいて1年。新妻賢二は変わらぬ手さばきで板場に立つ。
日本全国に約3万5000の鮨屋があるという。銀座だけでも約150店。登り詰めた狭い領域に30店ほどの鮨屋がひしめく。その中にはミシュランの星が来たところもあるが、評価はあくまで自身の舌である。
30の中には鮨の味はいいが、通夜のような静けさと緊張感の中で食べて帰ってこざるを得ないところもある。だが、新妻は「そうはさせない」。
30は甲乙つけがたい。サービスに文句があろうはずもない。しゃりが差し替えられ、あがりは黙っていても何度となく注される。ネタにこだわりを持たない店はない。鰤門のわさびは御殿場であり、のりは有明海といった具合だ。
あとは自分との相性となる。
日本とアメリカの間には数えられないモノが行き来するが、日本産でアメリカで興隆しているモノの一つが鮨だ。ほとんどはスシに変わっているが、30は伝統的な日本の鮨のまま世界の頂点に凛然と輝く。超然としたまま動じない。写真の男がその1人である。(敬称略)