今年のノーベル生理学・医学賞が6日発表され、大阪大学の坂口志文教授を含む3人の研究者に贈られることが決まった。制御性T細胞という免疫反応の暴走を食い止める細胞を発見した功績は大きく、ノーベル賞という最も権威のある賞に相応しいだろう。
ただ、以前から思っているのだが、研究者が成果を出してから同賞が授与されるまでに何十年もの時間を要していることが多く、もう少し早い時期に発表されるべきではないのだろうか。今回に限らず、このレベルになると医学界では研究成果の重要性はすでに広く認められており、ほとんどの場合、対象者にはすでに他の賞が授与されていることが多い。ノーベル賞は最後の最後に「ハイ、お待たせいたしまた」といった流れで授けらるように思えてしまう。
坂口氏の場合も同様で、 同氏が胸腺を切除したマウスに他のマウスから培養したT細胞を注入して自己免疫疾患を発症しないことを実験で明らかにしたのは1995年のことである。ちょうど30年前のことだ。95年以降、坂口氏にはウィリアム・コーリー賞や慶応医学賞、ガードナー国際賞など20以上の著名な賞が授与されている。そして最後の最後でノーベル賞が「キター」という形である。
拙著 『MITSUYA 日本人医師満屋裕明 エイズ治療薬を発見した男』で記した満屋氏も、随分前からノーベル賞の候補になっていると言われてきた。 満屋氏がAZTという世界最初のエイズ治療薬を開発したのは80年代。すでに40年ほどがたっている。今後、満屋氏のノーベル生理学・医学賞のニュースが聴かれることを祈りたい。