タクシーの中へ(8)

当ブログにはいくつかカテゴリーがあって、「タクシーの中へ」というものもある。前回書いてから2年以上も時間があいてしまった。

その間、タクシーに乗らなかったわけではない。むしろ以前よりも頻繁に乗っている。年間300回くらいか。このテーマで書かなくなったのは、以前のようにタクシーの運転手さんと話をしなくなったからだ。

東京の運転手さんはいま、なかなか話しかけてこなくなった。以前はこちらから話を振る前に、話をしてくる方がそれなりの割合でいた。

だがいまはこちらが話をしない限り、ほとんど無言でハンドルを握っている。運転手さんとの会話も、何百回も乗ると同じようなものになり、こちらも毎回話しかけることがなくなった。

ただ昨日乗ったタクシーは少し驚きだった。初乗りの値段が300円だったからだ。

「最近、値段を下げたんです」

80歳くらいの運転手さんは抜けた歯の隙間からスースー空気を漏らしながら、しかも笑いながら話をするので言っていることの半分くらいしかわからない。

そして「これでいいんです」と2回ほど言うと、またケラケラと笑った。

車を降りる直前、「300円というシールの写真を撮ってもいいですか」と訊くと、「どうぞ」とか「いいですよ」と言うかわりにまたケラケラを轟かせた。

ひさしぶりに楽しいタクシー乗車だった。

taxi6.22.18