トランプもメディアも煽りすぎ-。
そう言わざるを得ない。トランプは過去1週間ほど、いまにも北朝鮮と戦争をするかのような構えだった。米原子力空母カール・ビンソンを北朝鮮近海に派遣し、軍事行動も辞さないといった勢いを感じさせた。
ところが同空母はオーストラリア北西で演習していたことがわかり、急派されていなかった。トランプと、彼の言うことを確認せずに伝えたメディアに乗せられてしまった。
確かに、オバマ政権の「黙って耐えます。何もしません」的な外交政策から離れ、シリアへの空爆で見せたような「やる時は軍事行動にでます」的な政策に変わりはした。
それによって、北朝鮮への軍事攻撃も間近かといった空気が漂った。
だが実際は空母1隻(打撃群1個)で北朝鮮に先制攻撃をしかけることは戦術的にありえないし、北朝鮮の防空網を先制で壊滅させることは容易ではない。
さらに北朝鮮からの韓国への報復が甚大すぎてアメリカは手をだせない。いまのところは足踏みをせざるを得ないのが実情だ。3日前に書いたブログの通りである(北朝鮮情勢とキューバ危機)。
過去20年以上、アメリカの政権が北朝鮮を攻撃しなかったのも、そうした理由からだ。だが多くのメディアはメディアが書いたことにやられてしまった。
副大統領ペンスが19日、横須賀に停泊中の空母ロナルド・レーガンの艦上で20分ほどの演説をしたが、喫緊の有事というニュアンスの表現はつかわなかった。
「すべての選択肢は机上にある」とは言ったが、ロナルド・レーガンは現在整備中で、すぐに出撃がないことは船員がよく知っている。皆、どこか柔和な表情なのだ。
現在カリフォルニアにいる空母ニミッツも北朝鮮に向かう動きはなく、北朝鮮への先制攻撃という話はトランプの「カラの威嚇」ということになる。(敬称略)