誰にもとめられないトランプ

アメリカ大統領候補ドナルド・トランプの勢いが止まらない。

15日にネバダ州ラスベガスで行われた共和党候補者による第5回の討論会が終わっても、支持率は落ちるどころか伸びてさえしている。政治評論家だけでなく、共和党の主流派でさえもここまでの躍進は予想していなかった。

討論会では相変わらず抽象的なことしか述べないし、遊説先でのスピーチを聞いていても「イスラム教徒はアメリカに入国させない」、「僕が素晴らしいのはスッゴイ金持ちってこと」など唖然とさせられる話を繰り返している。

アメリカの大統領候補らしからぬ言動でありながら、 共和党有権者の6割はトランプの言説に「賛成か、ある程度は賛成」で、勢いは増すばかりである。

「トランプは危険な候補」という考え方は民主党だけでなく無党派層にもひろがっているが、この勢いを維持したまま予備選を駆け抜けるかもしれない。

17日夜、フジテレビのインターネット・テレビに出演してトランプが共和党の代表候補になる可能性は十分にあると述べた。それがアメリカのイマを冷静に眺めるということだと思う(アメリカのイマ)(トランプの胎動を考える) 。

トランプが支持される理由は4つに集約できると思う。

1 利益団体からカネを受け取らない - スーパーパックと呼ばれる集金目的の政治団体を否定し、自己資産をもちだしている。 利益団体から選挙資金を受け取らないということは、特定組織から政治的な影響を受けていないことを意味する。多くの有権者はその点を好ましいと感じている。

2 ビジネスマンとして成功をおさめた - 4度の破産を経験しているとはいえ、資産約1兆円といわれる財力を築くことは並大抵のことではない。逆に破産を経験しながら今の地位にいるトランプという人物に期待がかけられている。

3 本音をストレートに語る - 長い間、大統領選を追っているが、ここまで自身の本音を「普通に」 口にする候補はいなかった。大統領候補は選挙対策本部の戦略にそって話をすることが当たり前になって久しいが、トランプは直観を頼りにしていると思えるほど本音トークを繰り出している。それが保守派有権者の本音とかさなる。

4  行動力への期待 - 政治家ではないからこそ、言ったことを本当に実行に移せるかもしれないとの期待がある。たとえばパレスチナとイスラエルの中東和平を実現させるために「半年ほしい」と述べている。トランプは交渉のプロだけに、実際に両者を交渉のテーブルにつかせて和平交渉を成功させられるかもしれないとの期待がある。

最初の予備選となるアイオワ州コーカス(党員集会)は来年2月1日。いよいよ大統領選が本格的にスタートする(敬称略)。

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1988年、すでに大統領選出馬を考慮していたトランプ (Photo courtesy of Fusion.net)