塀の中に入ると奴隷と同じ――。

奴隷という言葉には少しばかり誇張が含まれるが、米国で犯罪に手を染めて実刑判決を受けると、出所するまで奴隷と呼んで差し支えない賃金で刑務作業を強いられる。

賃金は経験によって差違はあるが、平均時給賃金は25セント(約28円)。

服役中に「稼げるだけいい」との考えもあるが、近年問題視されているのは、世界的に名が知れ渡る多国籍企業が低額の賃金に目をつけ、受刑者を労働力として利用する動きが加速していることだ(米多国籍企業をたっぷり潤す現代の奴隷制度)。

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意味のない衆議院解散

血迷ったとしか思えない-。

安倍はどうやら外遊するはるか前に衆議院の解散を決めていたらしい。

消費税を8%から10%にするかどうかの「信を問う選挙」というのは、無理矢理つけた理由にすぎない。今年中に選挙をすれば、自民党は過半数を確保できるからという私利私欲による解散である。

衆議院の解散権は、憲法上内閣がもつが、首相の専権事項となっている。だから安倍のような自分勝手な理由で衆議院を解散できる。だが、いま解散すると経済や外交でのマイナス面しか思い当たらない。

1億2000万人以上の国民のトップに立つ人間の判断とは思えない。

アメリカの連邦議会には解散がないので、上院は6年、下院は2年の任期を過ごす。大統領の任期は4年。再選を果たせば次の4年もできるので計8年。それ以上は務められない。

大統領は辞任できるが、重要法案が通らなかったというだけで職を投げ出したりしない。こらえるのである。同時に、8年という任期がはっきりしているからこそ、何をどう進めるかの長期的な展望がひらける。

カナダやオーストラリアは日本と同じように、総督の権限で下院(日本の衆議院)を解散する権限をもつが、日本の首相は乱用し過ぎている。しかも我欲で解散権を行使している。ほとんどあり得ない世界である。

日本は憲法を改正して首相の解散権を剥奪すべきである。迷惑を被るのは国民であり、他国である。地方創生相の石破は「解散は総理大臣の専権事項なので、私たちがとやかく言ってはいけない」と言ったが、今回の安倍の解散については「とやかく言わなくてはいけない」。

こういう人物は国政の場にいてはいけないと真に思う。(敬称略)

米中間選挙で野党の共和党が大勝した。翌日、ワシントンから2通の電子メールが届いた。

1通目の差出人は「バラック・オバマ大統領」 だった。嘘ではない。件名は「次に来るもの(Here is what ‘s next)」とあった。

印刷するとA4の紙で1ページ。ホワイトハウスのロゴの入った書簡である(中間選挙直後にオバマ大統領から届いた手紙)。

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by the White House

タクシーの中へ(5)

アメリカの中間選挙が終わり、少し落ち着いた。

共和党が連邦議会の上下両院で多数党になってもワシントンの政治のあり方に本質的な変化はない。

大企業が捻出する多額のカネによって民主・共和両党が動かされている構図は変わらないからだ。選挙でもより多くの資金を集めた方が有利で、今回も共和党が民主党より多額のカネをあつめていた。結果は最初から見えていた。

先日、BSのテレビ番組で中間選挙について話をする機会があった。テレビ局に向かう途中のタクシーのなかで運転手さんと話し込んだ。選挙の話ではない。

「アメリカのことはわからないです」

多くの方は他国の政治などには興味がない。それよりも運転手さんの話の方が面白い。テレビのバラエティー番組はタクシー運転手さんの裏話を特集したらいい。

「2日前に乗せた女性は一人でずっと歌ってました。『歌ってもいいですか』と訊くので、運転手としては『いやです』とは言えないんです」

女性は最初から察知していたはずだ。乗客がタクシーの座席についた瞬間から「柔らかい主従関係」ができあがっていることを。ドライバーはめったなことでは拒絶しない。かなりのわがままも受け入れてくれる。それが密室での暗黙の了解だ。「歌いたい」といえば、「どうぞ」としか言えない。

「それで、その人はうまかったんですか、歌?」

「お上手ならいいんですが、、、」。言いたいことはわかった。

困った話もしれくれた。先月下旬、午前2時頃の新宿2丁目。男性客を乗せた時だった。

「普通は後部座席に乗りますよね。でもその方は助手席に乗せてほしいというのです」

「一人だったんですか、その人は?」

「一人です。助手席のドアを開けろという。これは危ないなと思ったんです」

それでもお客の要求に応えるところが日本の運転手さんらしい。

「警戒しながら助手席に座ってもらったんですが、、、」

「だいじょうぶでした?」

「オネエだったんです」

「そっちで危なかった?」

「しばらくしてから私の太ももをさわり出して、、、いやあ困りものでした」

それでも大事にはいたらず、板橋のマンションまで送り届けたと言った。

密室だからこその緊張感と距離感がなんともたまらないのがタクシーの魅力である。

非日常しか伝えない世界

ニュースを追っていて、たまに思うことがある。

「非日常的な世界しか伝えていないのではないか」

事件や事故をはじめ、政治や経済の諸事情はわれわれの普通の生活とかけはなれたところにある。ニュースとはそういうものと言われればそれまでだが、猟奇殺人や大統領の言動などは一般市民の日々の生活とほとんど接点がない。

以前、友人が訊いてきた。

「アメリカ人って普段なに食べてるの?」

テレビや映画のなかにはアメリカ人の食事風景がしばしば登場するが、それは設定された場面にすぎない。普通のアメリカ人が朝食に何を食べているのか、あまりにも普通すぎてわからない。

中西部オハイオ州の4人家族の朝食はどういった風景なのか。

まずコップ1杯のオレンジ・ジュースを飲み、数種類そろえてあるシリアルを選んでボウルに入れ、低脂肪ミルクを入れて食べる。コーヒーも飲むがデカフェ(カフェイン抜き)を選択する人も多い。あとはバナナやリンゴといったフルーツか。何も食べないで通勤途中にスタバによってドーナツとカフェラテで済ます人もいる。

アメリカの朝食の典型と思われるスクランブルエッグや目玉焼き、ソーセージを食べる人は今でもいるが、それはホテルでの朝食であり、卵料理を朝から作る家庭は過去20年でかなり減少している。もちろん食べるものは個人差が大きい。けれどもアメリカ人の朝ご飯は意外にも質素だ。

ただこうした普通のことがメディアで語られることは少ない。事件や事故は伝えられるが、日常が伝わらないのでいつまでたってもアメリカの全体像が見えない。

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