日本の良心

久しぶりに見る顔だった。

会えばかならず皮肉たっぷりのことを言うが、イタリア人らしい陽気さを携えていて、別れたあとはいつも晴れた空を見るような気持ちになる。

話は必然的にサッカーの話題になった。すでにイタリア、日本両国は予選で敗退している。今年はドイツの強さが秀でているという、ごく当たり前の話に落ち着いたが、彼はイタリアのテレビ局の特派員である。

なんでもない会話の中で、「ザッケローニが驚いていたよ、、、」と言った。

これは直接会ったのだと思って訊くと、日本代表が帰国してすぐにザッケローニにインタビューしたという。話の内容は主に2点。

1つは日本選手は技術的にかなりうまくなっているが肉体的な強靱さという点で、いまだにヨーロッパ、アフリカの選手に劣ってしまうという点。いまさら指摘されなくとも、、、ということだ。2つめは負けて成田に帰国した時、何百人もが暖かく出迎えてくれたことに驚嘆したという。

ブラジルがドイツに負けた直後、バス放火事件が相次いだ。自然災害が起きたあとも、日本では略奪や強盗はほとんど見られない。そうした日本の良心にザッケローニは過去数年、本当に感謝し、癒やされてきたという。

小さなサッカーを標榜し、パスをつなぐサッカーが本番では機能しなかったのは自分の責任であることを述懐しながら、それでも日本にはいい印象をもったまま帰国できると言ったらしい。

「実際のインタビューのVを観たい?あっ、イタリア語だった、、、」

そう言うと右手にもったタバコの灰が路上に落ちた。(敬称略)