人の記憶に残す

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人の記憶に残す―。

これはなかなか難しいことである。サッカー・ワールドカップの得点シーンが何度もテレビで放映されると、そのまま脳裏に刻まれることもあるが、日常生活のなかで後年までずっと記憶に残るシーンというのは珍しい。

毎日、眼の前のことに関心が奪われて、よほどショッキングな出来事だったり、随喜の涙をこぼすようなことでもないかぎり、2年後まである日のシーンを覚えておくことは難しい。

ただ結婚式は別である。それは自分の結婚式だけでなく、親族や知人・友人の結婚式でも記憶の中にとどまる。鮮烈に心に刻まれる。その情景が昨日のことのように浮き上がってきたりする。

今日、久しぶりに結婚式に参列した。直後に行われた披露宴にもでて、若いカップルの門出を祝福した。

けれども、六本木ヒルズに隣接したホテルで行うという招待状を受けた時、一抹の不安があった。いわゆる豪華絢爛な派手さの中に全体がつつまれ、出席していてもどことなくいどころがないような思いにとらわれないか、心配していた。

けれども、憂慮は単なる思い過ごしに終わった。かなりの予算がかかっていることは式場のセッティングや料理、引き出物から容易に察しがついたが、清廉という言葉で統一されたかのようなすっきりした流れが秀抜である。

スピーチは新郎側と新婦側から1人ずつだけで、余興のようなものはない。お色直しはあったが、余計なものを排除しながら温かい祝福の空気が醸されていた。

私はこの情景を何年たっても忘れないだろうと思う。結婚式の美質というのはこういう点に集約されるのではないだろうか。

結婚式を挙げない人も多い。実は私も1回目の結婚では大きな式を挙げたが2回目はしていない。それで結婚生活に影響がでてくるわけではないが、人の記憶という点では大きな違いがある。

それでは2回目をいまからやるかと問われたら、、、やらないだろう。あとは日々の記憶を自身のなかにどう心に刻んでいけるか、にかかっている。

(写真はグランドハイアット・ホテル内のチャペル。7月6日)