殿の登場

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国民の6割以上が反原発に賛同している中で、元首相の細川護煕は「原発ゼロ」を掲げて都知事選に参戦した。

28日午後3時、日本外国特派員協会の記者会見ではオリンピック開催や待機児童問題などにも触れたが、この人の争点はやはり原発である。

「2020年の五輪開催を目標期限として、原発を再稼働させず、それをテコとして自然エネルギーを活用して、日本経済の活力を生みだしていく」

都知事選に原発を争点にするのはいかがなものかとの批判もあるが、真っ向から否定した。

「原発ゼロによってあらたな成長を促していく。それが日本にとってベストの選択であるはず。原発は過去の産業といってもいい。ドイツでは原発を辞めて雇用が20万も増えた」

本当に日本人の価値観を問う選挙であるのか。

「今すぐゼロに決めないと、40年たっても50年たっても原発を辞めるということにはならないのではないか。トップの仕事というのは大きな方向を決めること。いまゼロにすることを決めれば、多くの企業が自然エネルギーの流れをつくる。その流れを早く作ることが大切」

私は「東京都は2013年9月現在、東京電力株のわずか1.2%しか所有していない。その中で原発ゼロにしていく具体策をとれるのか」という質問を投げた。殿の答えはこうである。

「東京都は株主としてはそれほど大きな力はないかもしれない。しかし第4位の株主だ。だから東電に対して経営計画の詳細を明らかにしてもらいたいし電力料金の透明化を計ってもらいたい。いろいろと注文をつけることはできる。東京エネルギー戦略会議というものを起ち上げようと思っている。具体的に東電に突きつけるべきいくつものテーマを投げかけて回答を求めていきたい」

これで原発ゼロにつながるのかははなはだ疑問である。

ただ穏やかな語り口は20年前の首相時と何らかわらない。殿を間近で見るのは、1994年2月にホワイトハウスでクリントンと共同会見を行った時以来である。白いモノが増え、皺も深くなった。

その時もそうだったが、鉄をも溶かすようなひたむきな思いを秘めているのか、表情からはわからない。76歳となった今、それがもっと分かりづらくなった。(敬称略)