銃規制:最後に必要なもの

アメリカ、コネチカット州で14日起きた銃乱射事件は、またしてもアメリカの狂気の一面を世界中に晒すことになった。今年7月にもコロラド州で12人が亡くなった事件が起きている。

考えさせられるのは、なぜアメリカにこうした事件が多発するかということだ。しかも、いまだに先進国のリーダーという進歩的な立場にあると思われる国で、世界最悪と呼べるような犯罪が繰り返されている。

原因は多角的に精査しなければならず、主要メディアやネット上で散見される「銃規制が不十分」や「バイオレント・ゲームの人気」といったことは十分な説明になっていない。

実はアメリカ国内の銃を使用した凶悪犯罪件数は04年以後、減少している。

日本の刀狩りのように、国内にある約3億丁の銃を没収する案もこれまで何度となく浮上したが、部分的に実施されただけで成功していない。武器の保持を謳った憲法修正第2条があることもある。

世界的にバイオレント系のTV・コンピューターゲームがさかんだが、それが直接、銃犯罪の増加につながるかというと、その因果関係は微妙である。

1日10時間以上も熱中するゲーマーであっても、「むしろスッキリして犯罪など考えつかない」という人が大多数だ。やはり犯罪者の生い立ちや性格、生活状況、その時の精神状態が「行動のベクトル」を負に動かしていると解釈するしかない。

針が振り切れてしまう一瞬に、銃が手元にある。弾丸が装填されている。邪悪な精神的高揚が治まるまえに引き金を引く対象が眼の前にある。

これまで殺人事件を何度も取材しているが、人間が持ついくつかのベクトルが負の方向に重なったときに殺人事件が起こると思える。何かが陽の方向に動くと事件にいたらない場合がある。

国家による銃規制は残念ながら完全には機能しないだろう。残るは倫理感を高める教育と個の意志の強さを磨くことである。

最後は個の力に委ねられている。

日本政治にとって何が究極なのか

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投票日前日、東京7区(中野区、渋谷区)の選挙現場を取材した。民主党現職の長妻昭と自民党の松本文明との一騎打ちといえる選挙区である。

厚労大臣まで経験した長妻だが、民主党劣勢の中、全国的に名前の通らぬ松本文明に追い上げられている。3年前は「ミスター年金」で名の通った長妻が圧勝したが、今年は苦戦している。いまの民主対自民の縮図を見る思いだ。

15日午後5時半、JR中野駅南口に選挙カーの上に乗る長妻の姿があった。黄色いブルゾンを羽織っている。ボランティアもみな黄色いブルゾンを着ている。

ほどなくして首相の野田が応援演説にきた。「接戦だから皆さんの力が必要です」と訴える。

12日間、自転車をこぎこぎ選挙区を駆けまわった長妻は行くところで厳しい声も受けた。この日も聴衆の中から「もういらねえよ」と野次が飛んだ。

ほとんど同じ時間。中野駅北口には松本文明が長妻よりも少し大きな選挙カーの上にいた。グレーのダウンジャケット。運動員はブルーのダウンを着ている。

しばらくして元首相の麻生太郎がきて、民主党政権と長妻の批判を5分ほど述べてから去っていった。

「たまたま通りかかったから、ちょっと聴いているだけです。エッ、誰に投票するか?。民主党はまた次、、だね」

60代の男性はそう言ってから「景気をなんとかしてほしい」と述べた。

有権者が抱える思いはさまざまである。民主が大敗することは間違いないが、長妻をはじめとしてどれだけの現職議員が残れるのか。

大多数の有権者の胸に去来するのは、過去3年の民主党政権が示した負の明滅である。同時に、自民党政権にもどって本当に「日本を取り戻せるのか」との疑問がある。

究極は、政治家や政権が代わっても法案を書く官僚が代わらないということである。(敬称略)