FOXニュース効果

元下院議長ニュート・ギングリッチは予備選の最初の2州で負けながら、3つ目のサウス・カロライナ州で勝った。

予備選前に行われたテレビ討論会で、有権者を味方につける攻撃的な語り口で一気に支持者を拡大させたのだ。ほとんどテレビ討論会のトークだけである。

前回の大統領選コラムでも書いたように(テレビ効果)、ギングリッチはトークだけは共和党で残った4候補の中ではもっとも長けている。それが見事に支持率に表れている。

昨年11月中旬から12月13日までのほぼ1ヵ月間だけ支持率が急上昇し、のちに急落。そして再びテレビ効果で急浮上した。しかもどの候補よりも保守系テーブル・ニュース局のFOXニュースからのインタビューを受け、思いのたけを述べている。昨年12月1日までだけでも52回も登場した。

何度も書くが、ギングリッチは倫理的にも政治的にも、また人間としてももっとも大統領にふさわしくない候補だと思っている。

別に個人的に恨みがあるわけではない。80年代から99年に下院議長を辞めさせられるまで、首都ワシントンで彼の言動を見てきているので「彼だけは選んではいけない」との思いがあるだけだ。アメリカの有権者はいったい何を見ているのだろうか。

選挙がはじまって間もない昨年6月、突然妻と2人でギリシャからトルコまでのクルーズ船の旅に出て、あとはスタッフにお任せしますという行状である。愛想をつかした選挙スタッフが多数辞めた。

ギングリッチのトークになびいているのは特定州の有権者だけであることを祈るのみである。これはアメリカのためでもある。(敬称略)