社会保険庁による年金記録の不備問題が尾を引いている。
今回の問題は、10年前に基礎年金番号が導入される前を対象にしているとばかり思っていたが、問題はもっと複雑だった。年金番号が導入されたあとも、一人に2つの違う番号が与えられたケースもあるし、番号があっても支払った年金が記録されていない場合もあり、混乱を極めていた。
日本政府はアメリカにならって、1997年に基礎年金番号を導入したが使いこなせていなかった。安倍政権は今後、その番号を年金だけでなく医療や介護にも使える「社会保障番号」として一元化するアイデアを出してきた。アメリカを一気に通り越して、ITカードにするという。
こうした不祥事がないと次になかなか進めないところが日本的であるが、IT化には賛成なので慎重に、同時に早急に進めてほしい。集団的自衛権や憲法第9条の改憲も同様である。平時では遅々として改憲の道をたどらないが、有事が発生したら短期間でまとまるのが日本である。
アメリカが「社会保障番号」を導入したのは1936年のことである。最初は年金記録を管理することを目的にしたが、徐々に用途が広がった。その証拠に、最近は年金を支払わない子供たちでも、ほとんどの子が「社会保障番号」を持つ。
86年以前にはほとんどなかったが、扶養者としての記録が必要になったことによる。現在は生まれてすぐに子供の番号の申請をする親が増えた。だが番号取得は今でも義務ではない。
「社会保障番号」は今では年金や税金、医療、身分証明などさまざまな分野で使われている。私が住んでいたバージニア州では(多くの州も同じ)、運転免許証の登録番号が「社会保障番号」と同じであった。社会保障局(SSA)だけでなく国税局(IRS)や陸運局(MVO)、金融機関、学校、会社などがこの9桁の番号を使っている。
アメリカには戸籍がないので「社会保障番号」を使って政府や企業、団体が管理目的のために使用しているわけだ。国民の間ではあまりにも一般化されているため、違和感を覚える人は多くないが、番号を盗用された犯罪が起きていることも事実だ。ただ利便性の方がまさっているし、私は日本はやっとここまで来たかとさえ思う。
犯罪や個人情報保護の心配はわからなくもないが、システムの重要度は高度3万メールル上を行くといった印象だ。完璧なシステムはない。まず構築してから精度をあげていけばいい。
アメリカの社会保障局は毎年、一枚の通知を送付してくる。”アメリカ政府にしては”親切なことで、老後、私が給付される年金額を教えてくれるのだ。アメリカの場合、支払い額によって給付額が違うので、年々その額は変化している。私は50歳なので給付されるまでにずいぶんと時間があるが、一応「これだけお支払いしますよ」という納付額が記載されている。
日本の社会保険庁が「社会保障番号」を導入してIT化する時に求められるのが透明性である。どれだけのカネが入り、どう使われているのか、そしてどれだけ国民に給付するのか、納付者一人一人に通知してほしいものである。
相変わらずアメリカにかぶれた意見かもしれないが、ご参考まで。