トランプの準専制主義

純粋な専制主義ではない。だが横暴なトップダウンの政治手法は「準専制主義」と命名してもいいだろう。

最近だけでも、トランプは連邦準備制度理事会(FRB)を「crazy」と呼びすて、株価下落と経済指標の数字の悪さはジェローム・パウエル議長のせいであると決めつける発言をした。それを受けて、FRBは今年10月までに段階的な利下げを検討しているとも伝わる。

トランプは貿易政策でも高圧的な態度を緩めようとしない。メキシコからの不法移民がアメリカ国内に流入しつづけているので、移民問題を貿易問題とリンクさせて、具体的な解決策が打ち出されなければ10月までにメキシコからの全輸入品に段階的に25%の関税をかけるとしている。

議会だけでなく、財界や一般市民からも反対の声があがっている。だが一向に構わないといった風情である。目的を達成できれば手段は選ばない手法はまさしく専制主義に通じるものがある。

ホワイトハウスの補佐官やスタッフたちは尻拭いに追われている。各省庁の長官レベルも同じ境遇で、トランプに楯突くと解雇されるか辞めざるをえない運命が待っているので、ボスの言うことに従わざるをえない。

敵にまわすとやっかな人間であるとの評はビジネスマンの時から変わらない。味方にすると利点も多いが、それはトランプ流に飲み込まれることに等しく、結局周囲には「イエスマン」しか残らなくなる。安倍もその一人だろう。

これこそがトランプ流の準専制主義というものである。今回アメリカに来て、輪郭が見えてきた。