定年廃止論

なにも新しい考え方ではない。

日本ではまだ実践されていないが、何人もの方が定年廃止を提唱している。

アメリカではずいぶん前から定年はない。本人に能力があり、仕事を続けられる環境がととのっていれば、80歳を過ぎても現役でいられる。本人次第である。

80代後半までコロンビア大学で教鞭をとっていた文芸評論家のドナルド・キーン氏が好例だ。何も大学の先生だけではない。一般の民間企業にも定年はない。

今日、久しぶりに顔を合わせたジャーナリストの知人が興味深いことを話してくれた。

彼は40歳半ばでアメリカの大学院の博士課程に入った人で、アメリカには50歳代でも博士課程に入ってくる人がいるという。博士号を取得する頃には日本の定年年齢を迎えるが、それからが次の人生なのだと張り切っているという話だ。

50歳代後半まで仕事をしたことで、ひとつのキャリアを極めたという実感を得たあと、次の20年を学者として生きることにしたというのだ。

職種は問わない。仕事をし続けることで健康寿命も延びていく。80歳まで仕事をつづけられる人は相当の割合でいるはずだ。いや、その方が健康寿命だけでなく、納税者として政府に寄与することにもなる。

60歳、65歳で定年としての線を引くことはもう現実的ではない。