喧嘩のあと

私は有楽町にある日本外国特派員協会というところに出入りしている。正会員でもある。

同協会の会員はいま2000人ほどだが、実は正会員といわれる人たちは300人ほどでしかない。私はアメリカに25年もいたので、正会員にしてもらっているが、あとは準会員といわれるメンバーで構成されている。

準会員のほとんどは日本人で、財界、政界、学界、さらに国内のメディア関係者である。むしろ、そうした方々がいないと外国特派員協会は成り立たない。

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外国特派員の人間模様は実に過激で、滑稽で、興味深い。辟易させられることもあるが、仲のいい記者が何人もいる。全員がヨーロッパ人である。

彼らの共通点は、米英という英語圏の国に住んだ経験がないにもかかわらず、恐ろしく英語が堪能なことだ。発音にクセはあるが、ほとんどがネイティブ・スピーカーと変わらないスピードで話をする。3、4カ国語が堪能な人も少なくない。

ただ語学がうまい彼らでも、日本語を流暢に話す人はほとんどいない。アルファベットではない違う言語体系の言葉をマスターすることがいかに大変であるかを証明している。

だから逆に、日本人が英語やフランス語をマスターすることがいかに大変かがわかるのだ。

彼らとはさまざまなトピックの話をする。ほとんどの記者が最初から本音トークを繰り出してくるので、胸がすく思いがするが、感情の起伏の激しい記者も多く、私はこれまでに3人と怒鳴りあいの喧嘩をしている。

その中の2人とは仲直りをしたが、もう1人とはその後、口をきかなかった。彼はもう同協会にはいない。

それは国家外交に通じるものがある。日本人の多くは争いを好まず、外交でも融和路線を推し進める。粗暴なトランプでさえも安倍はスリスリとすり寄って、相対する姿勢を示さない。

それが「日本らしさ」と言えばそれまでだが、時に自己主張も必要で、喧嘩の後に見えてくる関係もあるのだ。(敬称略)

全力疾走

コンビニを出てすぐ、バタバタバタという足音が聴こえた。

すぐに右手を見る。10代と思える青年がすごいスピードで走り出していた。まさしく全力疾走という言葉にふさわしい走りである。

20メートルほど先にある信号が黄色に灯っていた。

そのまま見ていると、信号はすぐに赤に変わったが、彼は見事に向こう側まで高速で走りきった。しかも全速力を維持したまましばらく走り続けている。危ないという思いはまったくなかった。久しぶりに見た全速疾走にむしろ感動さえ覚えて見とれていた。

横断歩道で走る人はたくさんいるが、ほとんどが小走りである。すぐに自分が最後に全力疾走をしたのはいつだったか、過去の思いをたぐり寄せた。

10年以上前、まだワシントンにいる時に5キロ、10キロのマラソンレースによく参加していた。その時、フィニッシュラインの直前で全速力で走っていた、との思いがある。少なくともこれ以上速く走れないスピードで足を動かしていた。

いまはスポーツジムでベルトの上を走っているが、蚊に刺されるようなスピードである。ベルトの上で全速力を出すのは違和感があるので、今度、外で久しぶりに全力疾走してみようかどうか考えている。

壊れる?

 

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Photo by Youtube

四面楚歌のトランプ、弾劾に向かうか

過去1週間でドナルド・トランプ大統領(以下トランプ)が立て続けに提訴されている。

大統領を有罪にすることは可能なのか。今後の見通しと、5月15日に当欄で論じた弾劾の可能性(「トランプ大統領が弾劾される可能性は50%」)についても改めて述べていきたい。

まず提訴について記したい。

1つ目は米首都ワシントンとメリーランド州の両司法長官が12日に起こしたものだ。

トランプは昨年9月、ホワイトハウス近くに「トランプ・インターナショナル・ホテル」を開業。もともとはオールドポスト・オフィスという商業施設で、トランプがホテルに改装した建物である。1泊5万円超の高級ホテルだ(四面楚歌のトランプ、弾劾は時間の問題か)。

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Photo courtesy of E-spaces

まだまだ続きます

放送メディアへの出演のお知らせです。

昨年の大統領選でたくさんの出演依頼をいただきました。選挙が終わってしばらくしたら落ち着くだろうと思っていましたが、トランプが大統領になったことで出演ペースは昨年よりも上がっています。

瞬時にして伝わる放送メディアの面白さと影響力は計り知れませんが、じっくりと腰を落ち着けて熟考してこそ生産できる活字メディアも大事にしていきたいと思っています。

 

・6月14日(水)7:00amから 東京FM(周波数80.0MHz)『クロノス

・6月14日(水)10:25amから(出演は11時過ぎから) テレビ朝日『ワイド!スクランブル

コミー前長官の爆弾発言

5月9日、トランプはFBI長官ジェームズ・コミーを突然解任した。そのコミーが8日、連邦議会上院の情報特別委員会の公聴会に現れて、「なぜ私が解任されたかわからない」と1カ月たった今でも、本当の理由はトランプから聞かされていないと述べた。

CNNの生中継でコミーの表情や話ぶりを見る限り、誠実に受け答えしているように見えた。真実を語る姿勢がうかがえる。

9日午後のテレビ番組で、コミー証言について話をすることになっていたので、メモを取りながら観た。

はっきりしたのは、コミーはトランプに「全面戦争」と言っていいだけの戦いを挑んだことである。

戦いを挑んだ以上、大統領をかばうような嘘をつく必要はない。真実をつきつけることが、FBI長官だったコミーの使命でもあった。

解任前、コミーは元大統領補佐官マイケルフリンと駐米ロシア大使との関係を捜査していた。トランプは自分の部下が捜査されるのを嫌い、コミーを解任。それが司法妨害にあたるかが注目点の1つになっている。

ただ公聴会では、それ以上に注目すべき爆弾発言があった。ロシア政府が昨年の大統領選挙に大々的に介入していたというのだ。

これまでは「疑惑」のレベルでとどまっていた。しかしコミーは言い切った。サイバー攻撃は「少なくとも数百回におよんでいた」と断言したのだ。

「ロシア政府が2016年の大統領選に介入したという点は疑いようがありません。目的をもって介入していました。洗練された方法を使っていたのです」

これは5月23日にCIA前長官のジョン・ブレナンがやはり議会公聴会で「ロシア政府による選挙介入があった」という証言内容と合致する。

諜報機関のトップだった2人による発言である。しかもメディアが報道した内容ではなく、嘘を言えば偽証罪に問われる公聴会の証言だ。

これからFBIとCIAという米諜報機関とトランプによる全面戦争がはじまることになる。また忙しくなりそうである。(敬称略)