コミー前長官の爆弾発言

5月9日、トランプはFBI長官ジェームズ・コミーを突然解任した。そのコミーが8日、連邦議会上院の情報特別委員会の公聴会に現れて、「なぜ私が解任されたかわからない」と1カ月たった今でも、本当の理由はトランプから聞かされていないと述べた。

CNNの生中継でコミーの表情や話ぶりを見る限り、誠実に受け答えしているように見えた。真実を語る姿勢がうかがえる。

9日午後のテレビ番組で、コミー証言について話をすることになっていたので、メモを取りながら観た。

はっきりしたのは、コミーはトランプに「全面戦争」と言っていいだけの戦いを挑んだことである。

戦いを挑んだ以上、大統領をかばうような嘘をつく必要はない。真実をつきつけることが、FBI長官だったコミーの使命でもあった。

解任前、コミーは元大統領補佐官マイケルフリンと駐米ロシア大使との関係を捜査していた。トランプは自分の部下が捜査されるのを嫌い、コミーを解任。それが司法妨害にあたるかが注目点の1つになっている。

ただ公聴会では、それ以上に注目すべき爆弾発言があった。ロシア政府が昨年の大統領選挙に大々的に介入していたというのだ。

これまでは「疑惑」のレベルでとどまっていた。しかしコミーは言い切った。サイバー攻撃は「少なくとも数百回におよんでいた」と断言したのだ。

「ロシア政府が2016年の大統領選に介入したという点は疑いようがありません。目的をもって介入していました。洗練された方法を使っていたのです」

これは5月23日にCIA前長官のジョン・ブレナンがやはり議会公聴会で「ロシア政府による選挙介入があった」という証言内容と合致する。

諜報機関のトップだった2人による発言である。しかもメディアが報道した内容ではなく、嘘を言えば偽証罪に問われる公聴会の証言だ。

これからFBIとCIAという米諜報機関とトランプによる全面戦争がはじまることになる。また忙しくなりそうである。(敬称略)