トランプ氏が迫られる“資産1兆円”処分

今年2月から「日刊ゲンダイ」紙上でアメリカ大統領選について連載をしていました。選挙後からは「トランプ大統領誕生」というタイトルで連載を継続しています(不定期)。以下が最新記事です。

【連載コラム】 世界が激震 トランプ大統領誕生

ドナルド・トランプの1兆円超(自己申告)といわれる総資産は、大統領に就任後いったいどうなるのか。

というのも米大統領は任期中、公務に専念しなければならず、民間の企業・事業に携わることは許されない。大統領という立場を利用して利益を上げると、倫理上の問題が発生するのだ。

だがトランプはホワイトハウスに入った後も、大統領特権を利用して事業の継続を目指している。22日にニューヨーク・タイムズ紙本社を訪れた時、「法律は私に味方してくれるはず」と楽観的な発言をした。だが現実はそれほど甘くない。大統領が関与する事業となると、世界中から利益供与や贈収賄の誘惑が生まれやすい。

ブッシュ元大統領の倫理担当弁護士だったリチャード・ペインター氏は「資産をすべて売却することが望ましい。少なくともトランプと名のつく不動産を処分するか、トランプという名前を外すべきだ」と指摘する。ウォールストリート・ジャーナル紙も17日の社説欄で「最良の選択肢はすべて売却すること」と書いた。

だがトランプは「すべてを清算することは多難だ」と述べる。CNNによると、トランプは現在、世界中で約500の事業(企業を含む)を同時進行させており、約3万4000人を雇用している。来年1月20日の就任式までに全事業を清算することは実質上無理がある。

その他の方法としては、資産管理者に事業を委託することだ。英語で「ブラインド・トラスト」という。トランプは昨年6月の出馬表明時、大統領に当選した時は3人の子どもに資産・事業を委託する予定でいた。だが3人とも、いまはホワイトハウスに入って大統領のアドバイザーになる可能性がある。子どもが連邦政府職員になると、やはり民間事業には携われない。

前出のペインター氏は、「大統領が世界中の事業にかかわって利益を上げることはできない。売却は苦痛だろうが、それが大統領になるための条件」と清算がベストであると語る。

トランプが資産の売却を渋ってグズグズしていると、倫理問題が浮上して、大統領の立場が危うくなることも考えられる。リベラル系メディアは手ぐすね引いて待っているはずである。

trumptower11-27-16

(ニューヨーク市マンハッタン5番街に建つトランプタワー。左側に隣接するビルはティファニー本店)