富裕層の難民

シリア難民の問題が深刻化している。

ヨーロッパ諸国はいまのところ、ドイツを除いて難民の受け入れには消極的だ。拒絶している国もある。そのため、多くのシリア難民はドイツを目指している。

そうした難民の中には富裕層の人たちもいる。内戦によって母国に住めなくなる状況は貧富に関係ないが、資産のある家族は別ルートですでに他国に逃げていることが多い。

パスポートやビザが正規のルートで入手できなければ、偽パスポートや偽ビザを使って飛行機で他国にわたる。すでに何ごともなかったかのようにヨーロッパ諸国に移り住んでいる富裕層もいる。

それはベトナム戦争時の南ベトナムからの難民にも同じことが言えた。ボートピープルと言われた人たちは小さなボートに乗って海に出た。

外国籍の船に拾い上げられればラッキーで、海賊に金品を奪われ、女性たちは強姦されたという話はいくらでもあった。ただ当時も富裕層のベトナム人がいて、彼らはボートではなく飛行機に乗って他国へ逃げた。

アメリカに住んでいたとき、その 1人に話をきいたことがある。印象的だったのは、彼らは平時から資産を土地や建物では持たなかったことだ。

戦争が絶えず行われて国境が変わるような国では、土地など「無」に等しいというのだ。お金持ちは資産をキャッシュか宝石で持つと言った。

ただ、いまテレビで映し出されるシリア難民の中には多額のキャッシュを抱えてドイツに向かっている人たちもいる。

今日、ヨーロッパ人の記者数人と話をしていて悲惨なストーリーを耳にした。

彼らの中には逃げる途中で、悪徳の越境請負業者に多額のカネを巻きあげられてしまう者がいるというのだ。組織犯罪グループが関与していることもある。

あるシリア人家族は悪徳業者から、「オーストリアの国境まで1000ユーロ(約13万円)でいってやる」と言われ、車に乗った。だが途中で金品を奪われたうえに、まったく知らない場所で降ろされたという。

そんな中、エジプトのビリオネアがすごい提案をした。地中海に浮かぶイタリア領の島を買いたいというのだ。もちろん難民に住んでもらうためだ。真剣にイタリアに「売って欲しい」と懇願した。

そこに新しいコミュニティーができれば何よりである。暗い話が多いなか、笑顔になれるニュースが降りてきて嬉しくなった。