可能な世界一

今月5日のブログで(世界一を目指さなくなった日本 )という原稿を書いた。

その中で「他国に追随できない高さの超高層ビルを建てられたはずだ」と記したが、確証はなかった。幸いなことに、それが十分に可能であることを知った。

今週、あるイベントでMCをやった。フランス人の建築家(Manuel Tardits)が東京の町を解剖するように様々な角度から分析する場だった。食事の合間に訊いてみた。

「東京スカイツリー、いやドバイのブルジュ・ハリファよりも高いビルを東京で建てることはできますね」

「5000メートルとは言わないけれども、構造上は2000メートルのビルでも十分に可能ですよ」

即答だった。ただ実際に建てるとなると現実的な問題がいくつもあるとつけ加えた。

「まず、それだけ高いビルの上部はいつも強い風に晒されます。ビルそのものはわざと地震や風になびくように柔軟に造られるため、上の方はかなり揺れます。酔いますよ」

それだけではない。周囲の住環境への影響やビルの維持管理など、クリアしなくてはいけない問題がいくつも出てくる。

ただ、構造上できるということを耳にしたことは何よりだった。というのも、本当に世界一の超高層ビルを建てるという強い念望を抱いたならば、そうした諸問題などブルドーザーでバタバタとなぎ倒すようにクリアしていけるはずだからだ。

むしろ、問題をクリアすることに喜びを覚えるような一群のやり手たちがいる。建設許可の問題から今は目に見えない問題まで、難度の高いハードルがあればあるほど果敢にチャレンジする人たちがいる。

けれども今、日本にはそうした何でも可能にしてしまうほどのエネルギーを携えた人たちが少ない。そして実践されていない。そこに停滞しつづける今の日本の問題の一つがある。