初めてのMRI

いつかはやってみたいと思っていた。頭部のMRI(核磁気共鳴画像法)。 

一般的な定期健康診査にMRIは入らないので、脳ドックという形で画像を撮ってもらうしかない。別に脳梗塞の初期症状があるわけでも、耐えられない頭痛が続いているわけでもないが、予防的な意味から検査することにした。

自分の脳内を画像という形で見られることはたいへん興味深い。機会があれば頭蓋骨を開いて見てみたいとさえ思うが、かなうわけもない。CT(コンピューター断層撮影)というのは以前、体の違う場所で撮影してもらったことがあるが、MRIは生まれて初めてである。

機械の外見はMRIもCTも、素人にはほとんど同じである。細いベッドに寝て、頭部の方から白いドーナツの穴の中に吸い込まれていく。両方とも人間のパーツの輪切り画像がえられる点で共通するが、MRIはX線を使わないので放射線被ばくがない。さらに、輪切りにされた画像コントラストがCTよりも高く、造影剤を使わなくとも撮影できる。

「音がうるさいのでヘッドフォンをします」

そこから音楽が流れてくるわけではなかったが、耳にヘッドフォンをつけるとすぐにドーナツの中に入っていった。CTは数十秒、中にいただけったが、MRIは長かった。

いく種類かの警報音が炸裂した。私の記憶の中から拾ってくると、映画『エイリアン』の最後に、シガニー・ウィーバーが本船の起爆装置を起動させたあとになり続けた警報音に似ていた。

「ギーカーギーカー」いっている。そして道路工事の掘り起こすような音も響く。さらに「ガーポガーポ」といった違う警報音もやってくる。工事現場に頭を突っ込んだかのようでもあるし、映画の中でエイリアンに襲われる中を逃げているような気分でもあった。

自分の中の映画は5分ほどで終わった。

その日のうちに脳神経外科の先生が、私の輪切り画像をしめしながら脳内を説明してくれた。血管も立体的に浮き上がっている。

腫瘍も血管の詰まりも、大脳の委縮もなかったが、右脳にポチンと小さい点があった。

「ぜんぜん問題ないです」

先生はそう言ったが、以前に無症状の脳梗塞を起こしたあとかもしれない。

首から上はその日のうちに結果がでたが、血液検査やその他の診査結果は後日である。また少し胸の鼓動は早まる。