官邸の大いなる欠陥

鳩山辞任は過去数週間の政局をみれば、それほど驚くべきことではなかった。

多くの国民は、政権末期の鳩山に対して「呆れてものが言えない」ほどの低い評価をしていたので、辞任は来るべき時が来たという印象だろう。

普天間問題は、日米両国が名護市辺野古に一応着地点を探ったが、本当の解決にはいたっていない。両政府は沖縄県民の意向にさからう形で決めたため、仲井真がハンコを押さなければ工事は始まらない。実際に辺野古に飛行場ができる日はこないかもしれない。それは過去14年の経緯をみれば容易に推測できる。

ネットの世界ではすでにこの件で何万というコメントがでているだろうが、あまり指摘されていないことを述べたい。官邸が完全に失敗している分野である。

それは官邸によるメディアコントロールである。

最大の欠陥は毎日の「ぶらさがり」である。小泉の時代から1日2回という通例になった「ぶらさがり」で、首相はメディアに醜態をさらしつづけた。

昨年の春、鳩山グループに講師として招かれて、アメリカの選挙について話をした。その時に、「ぶるさがり」は止めた方がいいと忠告したが、その場にいた多くの議員たちの胸には響かなかったようだ。

小泉はあれを逆に利用できたが、以後の首相たちはすべて「ぶるさがり」で覇気のない顔を毎日TVカメラにさらし、必要のないことを言い、自らの支持率を落として失敗してきた。鳩山も同じ過ちを犯した。

首相や大統領は毎日メディアの質問にこたえる義務などない。そのために日本では官房長官が質疑応答をしているのであって、国のリーダーは演説やステートメントを発表する場としてメディアを使わなくてはいけない。

それは一方的で全然構わない。しかも場所を選び、スピーチライターに原稿を書かせ、国民に向けて話をすればいい。記者の質問など、毎回受ける必要はない。

だから辞任のスピーチが過去数カ月の鳩山の演説ではもっともよかった。あれを日々の執務の中でやればよかったのである。一方的に20分しゃべり、TVで放映させ、記者の質問を受けない。そうすれば支持率はここまで落ちていない。

公式の記者会見など1カ月に1度で十分である。オバマもサルコジも頻度はさらに少ない。一国のリーダーがメディアの前、特にテレビカメラの前に立つ重大さが官邸にはわかっていない。

官邸広報がアマチュアであるということである。(敬称略)