トヨタもできていなかった危機管理

先週の国内ニュースは小沢一郎の不起訴と朝青龍の引退にもっていかれた感がある。

どちらもがっかりさせられるニュースだったが、もう一つ、財界で大きなニュースがあった。トヨタのリコール問題である。

アクセルペダルに関連した大規模なリコールで会社側の対応がおくれ、日米で批判が噴出している。アメリカ政府はそれを利用しているようにもみえる。

問題が起きることは致し方ない。人のいとなみに完璧はない。人間が完璧でない以上、理念的に完璧なものを創ることはできない。重要なのは問題が起きたときにどう対処するかである。

簡単なことではないが、切り返しがうまければベクトルをマイナスからプラスへ転じられる。しかし、先週のトヨタの対応はマイナスをさらに深まてしまった。

金曜昼、外国特派員協会の仲間とランチを食べながら、トヨタのリコール問題を話し合った。前日に行われたトヨタの記者会見での対応の悪さが皆の口から噴出した。私は出席していなかったので、彼らの思いを記したい。

        

            

フィナンシャル・タイムズ紙のマーティン・コーリン記者は満足な情報が得られなかったという。

「問題の責任者が誰なのかはっきりしていない。記者会見を開きながら、事実を満足に伝えることさえしない。問題を調査中なら、判明した事実を適時インターネットで公開すればいい。こんな簡単なことさえできていない」

ドイツのフランクフルター・アルゲマイネの特派員も批判する。

「記者会見では基本的な事実を記したプレスリリースさえ配らなかった。ブレーキ問題でアメリカでは何件くらいのクレームがきているのか。日本ではどうなのかといったこともわからずじまい。準備ができていないのなら会見は開かないほうがいい」

スイス放送協会の記者もいう。

「世界のトヨタも危機管理ができていなかったことが判明してしまった。情けない」

ただ、三人ともプリウスの性能のよさは認めている。別にトヨタが奈落の底に落ちたわけではない。かんじんなのは、問題が起きた時の対処法である。(敬称略)

(連載記事:堀田 佳男 – プレジデントロイター