転がり落ちる政(まつりごと)

民主党から講演の依頼をたてつづけに2回いただいた。国会議員の前で講演することは初めてである。

党首が検察に目をつけられて支持率が下降している時期だったが、すべての民主党議員が右往左往しているわけではない。危機感はあるが、新しいことを吸収しようとの意識が議員にあることは間違いなく、一介のジャーナリストに過ぎない私を招いてくれた。

私はアメリカの話をし、議員たちからは小沢問題についての内情を聴いた。納得できる部分と、「小沢という政治家はカネのしがらみを絶てない」という両方の思いが去来した。

小沢が国家論を語れる数少ない政治家であることはわかっている。しかし、田中角栄と金丸信というカネがらみで有罪判決を受けた政治家の秘蔵っ子である。国民はその印象を払しょくできていない部分があるはずだ。少なくとも私の中には小沢という政治家からクリーンなイメージはない。それは小沢が小沢であり続けるかぎり、残りつづけるものだろうと思う。

小沢が自民党を離れ、民主党で政権を執ることを念頭に置きはじめた頃から、カネの受領には細心の注意を払ってきたはずである。にもかかわらず、今回の事件である。西松建設は昨年、タイでの洪水防止トンネル工事にからんだ裏金問題で逮捕者を出したが、億単位のカネを国内に流入させたと伝えられている。その一部が小沢にもたらされたと言われており、捜査の流れから小沢を無視できなくなったということだろう。

「東の小沢、西の二階(自民党)」という言葉どおり、建設業界からの献金は途絶えなかった。

残念なのは、不況のまっただ中にありながら、ほとんどのメディアが西松疑惑に翻弄されて、いまもっとも急がねばならない景気対策についての本質的な報道をしていないことだ。それは麻生内閣にもいえることで、予算を通せば済む問題ではなく、国民に対して首相がいくつもの対策を提示して、前向きな姿勢を示さないといけない。

「言うは易し、行うは難し」なのはわかっているが、今こそ政治家の決断力と実行力が必要な時はない。(敬称略)