パスポートのスタンプ

外国に行った時、出入国の印としてパスポートにスタンプが押される。だが近年、証印が押されないことが増えている。スタンプ集めを趣味にしているわけではないが、外国に行ったという証明があのスタンプだったので、押されない寂しさは喩えようがない。

過去にたくさんの国を訪れている人にとっては、スタンプを眺めることで記憶が蘇るし、スタンプに刻まれた日時を見返すことで旅の追体験ができる。思い出づくりを取り上げられたようで、何ともいえない寂寥感が去来する。

先週から今週にかけてアメリカに取材にでかけていた。日本の出国・入国とアメリカの入国・出国の4回で、スタンプが押されたのはアメリカの入国時だけ。アメリカは以前から出国時にスタンプを押さないが、いま日本は両方でスタンプを押さない。

本人確認をする自動化ゲートの導入により、法務省入国管理局の係官と会話をすることもない。出入国時の審査時間を短縮させるのが目的で、便利にはなったが、やはり「スタンプ、プリーズ」という気持ちは消えない。

入国管理局の事務所にいけばスタンプを押してもらえるが、今回、人の流れに乗ってゲートを通過し、そのまま荷物のベルトコンベアのところまで一気にでてしまった。

この流れは日本だけではない。香港やオーストラリアでもそうだし、ヨーロッパではシェンゲン協定の加盟国26カ国間を移動する時は、国境を越えてもスタンプは押されない。ますますスタンプを増やすことが「難しく」なってきている。

この先何十年かたって体内にチップが埋め込まれたりすると、パスポートさえいらなくなる日がくるかもしれない。思い出づくりのスタンプを返してくれという気持ちでいっぱいである。

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スタンプがパスポートに溢れてページが足りないことを心配する日はもう来ない?