米国民がトランプを選んだ理由

いよいよ明日(米時間1月20日)、ドナルド・トランプ氏(78)が就任式を迎える。第2期トランプ政権がスタートする前に、なぜ米国民はトランプ氏を再び大統領に選んだのか、あらためて考えてみたいと思う。

トランプ氏はいわば「いわくつき」の政治家であり、大統領になってほしくない人物との思いをもつ国民も多かったが、選挙では勝利を勝ちとる。2度の弾劾訴追だけでなく、元不倫相手への口止め料支払いなど、罪状34件で有罪判決を受けていた政治家であるにもかかわらずである。

右派の人たちの多くは、左寄りのメディアがトランプ氏の言説をことごとく歪曲していると主張する。CNNなどはフェイクニュースと呼ばれ、トランプの発言を正確に伝えていないと言われた。こうした反トランプ陣営を跳ね返す意味でも、トランプ支持を押し進めるべきであるとの動きが共和党内に醸成されていった。

さらに、トランプ氏はレーガン大統領が国民に投げかけた「あなたは4年前よりも暮らしがよくなっていますか」という質問を発した。第1期目のトランプ政権では減税、経済成長、株価の上昇があったことから、多くの国民はあの4年間をふたたび味わいたいとの思いがあった。バイデン政権下では物価が20%近くあがったため、あのよき4年間をもう1度との思いを抱いた。2024年の選挙戦では経済政策でトランプ氏はカマラ・ハリス氏を大きくリード。多くの共和党員にとって、経済が最大の関心事であることから、最終的にトランプ氏が選ばれたと思われる。

トランプ氏が選ばれたもう一つの理由は移民問題である。バイデン政権下では、国境を不法に越境する人数が急増した。不法移民が起因する犯罪も増えたことから、トランプ氏は国境を閉鎖し、壁を建設し、1100万といわれる不法移民の強制送還を提唱する。こうした政策を過激と捉える人もいるが、民主党の中からも「不法移民は返すべき」との意見もあることから、トランプ氏への支持が集まった。

こうしたことを考慮すると、トランプ氏が大統領に選ばれた理由が浮き上がってくる。右派の中にはトランプ氏を「左派に傾いた米国を救う救世主」と呼ぶ人たちもおり、来週からのトランプ氏の手腕が見ものである。

トランプ新政権の税制

今月20日にトランプ新政権がスタートする。過去に大統領選で破れ、再びホワイトハウスに戻った大統領にグローバー・クリーブランド氏(第22代と第24代)がいるが、トランプ氏は返り咲きとしては2人目である。続けて2期8年を務めるよりも、距離をおいて大統領職を考察できるという点でプラス要素が考えられるので、トランプ氏には1期目よりも精到な執務を行なってほしいものである。

すでにさまざまなところでトランプ新政権の政策が論じられているが、私が個人的に強い関心を寄せているのが税制である。個人に限らず法人でも、基本的に税率がさがって減税措置がとられれば嬉しいが、国家財政を考えると歳入が減るということなので一長一短である。政権発足前に発表されているトランプ税制によれば、個人の所得税も法人税も下げられることになっている。

法人税は現行の21%から20%に引き下げられるが、米国内で生産を行なっている企業に対しては15%までの税率が適用される。トランプ氏は先月、ニューヨークで公演したときに、「減税によって経済成長を後押しする」と強調。ただ減税によって税収が減るため、政府にとっては痛手となる。減収分はどうするのか。

ここまででわかっているのは、関税を上げて減税で穴埋めをするということだ。一律関税として輸入品に10%から20%の税率を課す。中国製品に対しては60%という数字がでており、政権発足後の米中貿易戦争が懸念されている。トランプ氏の意図する税率が施行された場合、平均関税率は現行の2%から18%近くまで上昇する(米ワシントンのタックス・ファンデーション)とみられている。

関税を課すかどうかの判断は、米国では連邦議会がおこなうが、トランプ氏は議会の承認なしで行うつもりで、すでに「オレオレ流」がでてきている。米国が他国の商品に関税をかけたばあい、他国からの報復関税が待っていることも考慮しなくてはいけない。トランプ氏らしいと言えばそれまでだが、他国への配慮も政治家には必須である。