トランプの経済政策

トランプ政権がスタートした。

トランプは製造業を中心に、雇用を回復させると意気込んでいる。就任後、初めて執務をした23日の朝、製造業界の大手企業CEOを何人もホワイトハウスに集めた。

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工場を国外ではなく国内に戻して雇用をうみだしてほしいと訴えている。けれども、トランプがやろうとしていう雇用創出策は時代遅れである。

自動車はいまでも製造業の一翼ではあるが、すでに「古いタイプの製造業」の代表格で、工場を米国内にもどしたところで、雇用を大幅に取り戻すほどのインパクトはない。

実はアメリカの製造業の雇用者数は1979年から2015年までに約700万人も減ったが、8割ほどは事業の効率化やオートメ化、生産性向上によってそぎ落とされたものなのである。工場が国外に移転したことで発生した失業は10数パーセントだけなのだ。

しかも家電や繊維といった「古いタイプの製造業」をアメリカはすでに捨てている。化学製品、宇宙工学、ITといった「新しいタイプの製造業」にすでに切り替わっており、高い技術をもった労働者はむしろ不足してさえいる。

さらに製造業の生産高は上昇しつづけていて、トランプが口にするのは置き去りにされた古いタイプの製造業に従事した労働者たちなのだ。

残念ではあるが、彼らが新しい職業訓練を受けたり、自ら新事業を立ち上げるなどしない限り、「古いタイプの製造業」が今後劇的な復活をはたすことはないので、立場は弱いままだ。

トランプはいったいどこまでアメリカの事情を正確に理解しているのだろうか。