初めてのモデル

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「日本画をやっている人は誰でも描けますから」

何年も前から知っている中村春佳は少しはにかんだ表情で呟いた。

左横に座り、じっとこちらを睨んでいる。ほとんど音もたてずに鉛筆を上下左右に動かしている。

初めてデッサンのモデルになり、動かずに座りつづけることに多少の戸惑いとほのかな嬉しさを感じながら、作品ができあがるのを待っていた。彼女のウデがいいことは十分に想像できた。

直接、相対した時間だけでは終わらず、最後は自宅で仕上げてくると言った。それが上の作品である。(敬称略)