ロシア疑惑(3)

今月10日、興味深いインタビューが米NBCテレビで放映された。

今年1月まで保守系のフォックスニュースにいた女性ジャーナリスト、メーガン・ケリーがプーチンにインタビューしたのだ。NBCと言えば、フォックスとは対極のリベラル系放送局である。

ケリーはかなり突っ込んで、ロシア疑惑について問い糺していた。だがプーチンは、ロシア政府が2016年大統領選に介入しことを否定しつづけた。

「どうしてロシア政府が(米大統領選に)介入する必要があるんですか。誰にそんな許可を出すんですか」

とぼけているとしか思えない答えだった。ケリーはさらに、2月16日に13人のロシア人がロシア疑惑で米捜査官に逮捕されたことにも触れた。だがプーチンはこう切り返している。

「1億4600万のロシア人がいるんです。まったく関知しませんね。彼らはロシア政府の利害を代表しているわけではない」

プーチンらしいといえばそれまでだが、証拠となる文書がモスクワに送られてきたら「見てみる」と述べただけだった。

ロシア疑惑を捜査している特別検察官のロバート・ムラーは、証拠があったからこそ13人を起訴したのである。

本丸(トランプ)を落とせるのか落とせないのか、その答えがでるのはもう少し先になりそうだ。(敬称略)

kelly3.12.18

Photo from Youtube

似た者同士

8日午前、トランプが金正恩からの招待を受けたことで、米朝関係は急速に前へ進みそうだ。

しかし今年1月1日、金正恩は「新年の辞」で「アメリカ本土全域が我々の核攻撃の射程内にあり、核ボタンはいつも机の上にある」とアメリカを威嚇していた。

翌日にはトランプが、「より大きく強いボタンが自分の机の上にある」とツイートで反撃。2カ月半前まで、米朝関係は緊張状態にあった。

それが平昌オリンピックを契機に、まず南北が接近し、雪解けとも思えるような関係改善から、北朝鮮は急にアメリカに接近してきた。

表面的にはたいへんいいニュースだし、私も昨日、テレビの生放送でそう発言した。しかし、いつトランプと金正恩に心変わりが起きてもおかしくない。それほど二人は気まぐれであり、サイコパスといっていいほど反社会的な人格を形成してきたと思える。

似た者同士のリーダーである点で大変仲良くなる可能性があると同時に、すぐに心変わりして相手を嫌悪し、憎しみを抱くこともあるだろう。

しかも2012年4月、北朝鮮は最高人民会議で憲法改正をおこなって、序文で「核保有国」になったと明記した。その国が簡単に「非核化」を行うとは思えないし、信じられないのだ。

非核化をするということは、憲法違反のなにものでもない。金正恩はどう説明するつもりなのだろうか。たぶん本心には、非核化などないとみる。

米朝関係は楽観と悲観をかかえたまま、相互に出方をうかがいながら進んで行くことになるが、私は楽観視していない。(敬称略)

Media appearance

今日の放送メディア出演予定:

 

・3月9日(金)1:55pmから  TBS/CBC『ゴゴスマ~GOGO!SMILE!

 

今朝、トランプが金正恩からの招待を受けるとのニュースは驚きだった。しかも北朝鮮は非核化するという。どこまで本気なのかはわからないが、前向きに進んでいくことを願う。今朝、番組担当者から電話があり、出演がきまった。

勇気の出る映画

pentagonpapers3.7.18

映画の試写会でスピルバーグの最新作を観てきた。

ペンタゴン・ペーパーズ:最高機密文書ーー。

久しぶりに勇気がモリモリ湧いてくるような映画だった。ポパイがほうれん草を食べて腕に力こぶができるのを、実感できる気さえした。

1971年6月、ニューヨーク・タイムズはペンタゴンが作成した秘密文書を暴く。数日後、今度はワシントン・ポストも同じ文書を入手して公開する。内容はアメリカの歴代政権がベトナム戦争の戦況について、国民にウソをつき続けてきたという事実だった。

第二次世界大戦時の日本の「大本営発表」と同じことがアメリカでも行われていたのだ。すでによく知られた事実だが、スピルバーグが再び世の中に映画として問いただした。

「権力(政府)はウソをつく」という事実は歴史のなかで繰り返される。それを暴くために権力に歯向かう人間がいる。いや、そうせざるを得ない状況があるのだ。

いまのトランプ政権と安倍内閣に通じるものがあるだけに、勇気を授けられた。

先日のアカデミー賞で作品賞と主演女優賞(メリル・ストリープ)にノミネートされていたが、受賞は逃している。日本での公開は3月30日から。

ロシア疑惑(2)

前回のブログ「ロシア疑惑(1)2月24日」では、ロシア疑惑の経緯とこれまで起訴された人物について簡単に記した。

元FBI長官ロバート・ムラーが特別検察官に任命されてからほぼ10カ月。まだ全容解明にはいたっていないし、検察側の切り札はまだ出していない。

昨年12月、私がトランプ政権の主席戦略官だったスティーブ・バノンにインタビューした時、彼はこういうことを口にしていた。

「コミー長官を解任したことは、アメリカの近代政治史上最大のミス」

誇張が込められていることを考慮しても、トランプとしては「やっちまった」感が強い判断だったわけだ。そばにいたバノンが一番そのことを知っている。

コミーはロシア疑惑の捜査に入っていた。トランプとしては、コミーを辞めさせれば捜査が進まないと思ったのだろうが、まったくの逆だったということである。

FBIを含む司法省の人間は反トランプで結束したからだ。人望のあったコミーを無理やり辞めさせたトランプの暴挙は許せないという論理である。

以来、「コミー解任は司法妨害にあたる」というのが、ムラーチームが狙うトランプ起訴の理由のひとつになっている。

昨日、ビル・マーというテレビ司会者がHBOの自身の番組で、オバマ政権時の司法長官エリック・ホールダーにインタビューしていた。私は90年代からマーの番組はよく観ていた。

ホルダーはムラーが司法妨害という線で捜査を進めているはずだと述べた。

「私は過去30年ほどムラーを知っています。彼はいま(司法妨害を立件するために)できる限りのことをしているはずです。もうしばらく待つべきでしょう」

しばらくしたら、「トランプ大統領が起訴されました!!」というニュースが飛び込んでくるかもしれない。

あり得る話なのである。(敬称略)