別世界の魔法

いつもは政治家やジャーナリストなど、絶えず眉間にしわを寄せているような人たちが私の周囲には多いが、今日ばかりは少しだけ華やかな世界をのぞいた。

国際短編映画祭「ショートショート・フィルムフェスティバル&アジア」の授賞式に招待されたので、胸にポケットチーフを入れて出かけてきた。渋谷のヒカリエ・ホールには 普段、映像で観る芸能人があふれていた。

会場に入る前に、四畳半くらいの広さがあるエレベーターに乗った。そこでまず、叶姉妹の妹と乗り合わせた。もちろん知り合いではないが、なんとなく視線を投げてしまう。 大きなサングラスをしているが、どこをどうかくしても叶姉妹であることは隠せず、思わず頬がゆるんでしまう。

自宅で招待状を眺めたときに、藤原紀香、相武紗季といった名前が読めたので、フンフンと思っていると、妻が韓国人俳優チョン・ウソンの名前を見つけて「写真撮ってきて」。夫婦そろってミーハーだったことがよくわかった。

案内状には書かれていなかったロックバンドGlayや千原ジュニアといった多くの芸能人がいて、少しだけ別世界を体験することになった。

授賞式では数本のショートショート・フィルムが上映され、最優秀作品賞にはイラン人監督の 『キミのモノ』が選ばれた。

ただ、会場を後にして仕事場にもどる途中に「別世界の魔法」はすぐに解けてしまった。(敬称略)

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左から冲方 丁(うぶかた・とう)、藤原紀香、奥田瑛二、レザ・ファヒミ監督、河瀬直美、チョン・ウソン

動く時期が遅すぎた―。そんな印象が拭えない。

翁長雄志・沖縄県知事が訪米を終えて6月5日に帰国した。米政府関係者に対して辺野古の新基地建設断念と普天間飛行場の早期閉鎖・返還を説いてまわった。

翁長知事の訪米の成果は日本のメディアの見出しを追うだけで十分に推察できる。

朝日新聞デジタルは「『辺野古NO』通じず 米の冷遇実感」と打った。産経新聞は「沖縄知事、辺野古反対訴えたが・・・米政府側『揺るぎない』」と、ほとんど成果が上がらなかったことを伝えた(米国から見た、翁長沖縄知事の訪米)。

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アメリカの良心

アメリカから戻って8年以上がたつが、いまだにホワイトハウスからメールが届く(From the White House )。

今朝も差出人のところに「President Barak Obama」という名前が刻まれたメールがきていた。もちろん本物のホワイトハウスからのメールであるが、私一人に出されたものではなく、多くの人に同時に配信されたメールだ。

内容は故エドワード・ケネディがオバマに個人的に送った手紙を紹介するものだった。エドワード・ケネディは1964年に暗殺されたジョン・F・ケネディの 弟で、2009年8月に脳腫瘍で他界している。

手紙は亡くなる3カ月前の5月12日にオバマに宛てて書かれたものだった。今朝、届いたメールにはその手紙がそのまま添付されていた。

内容はアメリカの国民皆保険(オバマケア)についてだった。アメリカにはそれまで日本のような国民皆保険がなく、健康保険に入っていない国民は4500万人以上もいるといわれていた。

政治家として、すべての国民に健康保険を提供しようと考えることは当然だろうし、一国のリーダーとしての使命であるとも思われる。1912年にセオドア・ルーズベルトが実現しようとした時からの懸案でもある。

しかし保守派の人間は徹底的に反対してきた。自由診療が受けられにくくなるばかりか、自分たちの税金が低所得者の保険に使われたくないなど、理由はいくつもあった。

ケネディが手紙を書いた時点でオバマケアはまだ法律になっていなかった。ケネディは国民皆保険の実現に向けて 尽力していたリーダー的な政治家だったが、法律が誕生する10年3月をまたずにこの世を去るのだ。

手紙の一節を抜粋したい。

「・・・いよいよ(オバマケアが法律になる)最終段階を迎えたのだと思っています。法律になると確信しています。ただ、法案が署名される時に、たぶん私はその場にいられないでしょう。けれども、あなた(オバマ大統領)こそが、アメリカ社会が長年待ち望んだ改革を実現できる大統領だと思っています。国民皆保険を実現させることが、私が政治家になった原点でした。そして政治家をつづけるエネルギーであり、力だったのです。きっと長年の夢はかなうと思っています・・・」

ケネディとしては法律が施行させる瞬間をどれほど見たかったことか。

なぜオバマがこの手紙を今になってメールに添付したのか。

日本時間10日午前1時頃から、オバマがテレビで国民皆保険について話をするからだ。だが、ケネディはもうそこにはいない。(敬称略)

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by the White House

2009年、ホワイトハウス内でオバマ大統領と語りあうエドワード・ケネディ

アメリカ大統領選:共和党からは16人が出馬か

アメリカ大統領選まであと1年5カ月もあるが、保守派である共和党からはすでに主要候補が10名も出馬している。

元大統領ブッシュの弟であるジェブ・ブッシュはその中に入っていない。彼は6月15日に出馬してくると見られている。さらに不動産王ドナルド・トランプも共和党から参戦してきそうだ。これから出てくる候補を考慮すると、共和党は16人に達しそうである。ちなみに、民主党からはヒラリーを含めて現在まで4人。

16人というのは連邦議員や州知事、さらにアメリカ社会ですでに名前が通っている人だけで、泡沫候補も含めるとさらに増える。

たぶん日本のメディアで16人という数字を挙げ、名前をすべて列挙している媒体はないだろうから、当ブログでまず記しておく。

共和党から出馬宣言した候補(姓名のアルファベット順):

・Ben Carson ベン・カーソン(元神経外科医)

・Ted Cruz テッド・クルーズ(テキサス州選出の上院議員)

・Carly Fiorina カーリー・フィオリーナ(ヒューレット・パッカード元CEO兼会長)

・Lindsey Graham リンゼイ・グラハム(サウスカロライナ州選出の上院議員)

・Mike Huckabee マイク・ハッカビー(元アーカンソー州知事)

・George Pataki ジョージ・パタキ(元ニューヨーク州知事)

・Rand Paul ランド・ポール(ケンタッキー州選出の上院議員)

・Rick Perry リック・ペリー(テキサス州知事)

・Marco Rubio  マルコ・ルビオ(フロリダ州選出の上院議員)

・Rick Santorum リック・サントラム(ペンシルバニア州選出の元上院議員)

出馬してくると思われる候補:

・Jeb Bush ジェブ・ブッシュ(元フロリダ州知事)

・Chris Christie  クリス・クリスティ(ニュージャージー州知事)

・Bobby Jindal ボビー・ジンダル(ルイジアナ州知事)

・John Kasich ジョン・ケーシック(オハイオ州知事)

・Donald Trump ドナルド・トランプ(実業家)

・Scott Walker  スコット・ウォーカー(ウィスコンシン州知事)

ある作家のフレーズ

「作家では、誰が好きですか」

先日、ある人から訊かれた。迷いもせず「開高健(かいこう・たけし)」と答えていた。

最近の作家の作品もよく読むが、誰が好きかという質問を受けると、学生時代に自分が心酔した作家が先にくる。

開高の作品はほとんど読んだが、そのなかでも『夜と陽炎』という自伝小説は繰り返し読んでおり、先週からまたバッグの中に入っている。日本文学大賞を受賞した作品で、音の記憶をたどりながら半生を描いた稀有な小説である。

私にとって開高は、小説家と詩人の中間に位置するような人で、長大な作品のなかに眼を2倍ほども開かされるようなフレーズがさりげなく配置されていたりする。

ユーモアに溢れた文章を書くという点でも、たいへん好感が持てる人だ。たとえば『夜と陽炎』のなかにサルトルに出会ったときのことが書かれている。

「サルトルにパリで会ってみると、子どもが大人の外套をひきずるようなぐあいに外套を着込んだ小男で、ひどいガチャ眼で、右の眼に挨拶していいのか、左の眼に挨拶していいのか迷うくらいであった」

こうした表現にであうと、頬が緩んでしまう。ただ作家の好みほど多岐にわかれるものはない。59歳で逝ってしまったことが悔やまれてならない。

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