タクシーの中へ(3)

私は仕事だけでなく、プライベートでもさまざまな国へ出向く(世界の街角から)。

新しい土地に行くと3つのことをするようにしている。1つはマーケット(市場)に足を運ぶこと。2つめは富裕層と低所得者層の住宅街に足を運ぶこと。3つめがタクシーに乗ってドライバーと話をすることである。それによってその国の表情がずいぶん読み取れる。

英語を話さないドライバーも多いが、新しい国に降りたった時は気が張っていることが多いで、その所作に違いを見いだしやすい。それが国民性の違いとなって興味深い比較ができる。

国によっては(ドライバーによっては)、目的地までわざと遠回りをしたり、料金をよけいに請求したり、手品のようなマジックを使って料金を奪うことさえある。

自分ではかなり旅慣れていると思っているが、何度も騙されたことがある。ニューヨークでは、滞米20年後であっても不正に料金をとられたし、トルコやギリシャでも騙された。わかっていても「あらま、やられちゃった」だった。

その点、日本のタクシーの運転手さんで客を騙す人はほとんどみられない。日本語のできない外国人観光客を乗せた時でも同じである。むしろより親切に送り届ける人の方が多いだろう。中には遠回りをして料金を稼ぐ人もいるが、例外のはずだ。

先日、運転手さんに訊いてみた。日本では客を騙すようなドライバーはいないか、と。

「酔っ払った客に料金を踏み倒されたり、値切られることの方が多いですね」

なかなかつらい稼業なのである。