19世紀後半の陰と陽

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仕事場から歩いて5分のところに三菱一号館美術館がある。

いま『近代への眼差し:印象派と世紀末美術』という展覧会をやっている。この世紀末というのはフランスの19世紀後半という意味だ。

私は美術に造詣が深いわけではないが、芸術作品に直接ふれると人間の生への営みを感じられるので、時間が許すかぎりさまざまなところへ行くようにしている。必ず学ぶものもある。

たとえば、今回の展覧会ではルノアールやモネといった印象派の代表的な画家からフェリックス・ヴァロットンやオディロン・ルドンなどのナビ派の画家まで、39人の作品と相対することができる。

多彩な色と光を駆使した印象派とは対照的に、ヴァロットンやルドンの作品には人生の暗部をモノクロで表現した悲哀があり、同じ時期のフランスに、ここまで真逆の心模様を表現しようとした画家たちがいたのかと思い知らされるのである。

ルノアールの肉感的な裸婦画を観たあとにルドンの石版画を眺めると、陽光の差すセーヌ川の水遊びのあとに、陰鬱な自室にもどって現実の生活に対面するような落差を感じざるをえない。

いつの時代にも陰と陽があるように、印象派の絵画で溢れかえっていると思っていたフランスの19世紀後半にも、物憂げな思索を表現したアーティストがいたのである。

ヴァロットンの木版画は秀逸である。日本のアニメの源泉に触れるような気がした。