少しだけ夢のあるストーリー

9月初旬のことである。カナダ西海岸にあるバンクーバー島(バンクーバー市ではない)の海岸に1本のビンが流れついた。

島に住むスティーブ・サーバー(53)という男性は海岸の散歩を日課としており、そのビンを見つける。ライトグリーンのガラス製のビンで、ワインボトルのような形状だ。白い蓋で密閉されている。

見たところ、古そうなビンである。中が少し透けて見えるほど表面が波で洗われている。蓋を固定する金属もサビついている。

よく見ると、手紙のようなものが中にあった。しかも手書きのサインが読める。

「(カナダ)ベリングハム市在住アール・ウィラード、1906年9月26日」

その手紙が本物であれば、107年前に書かれたものということになる。本当だろうか。

100年以上も太平洋に漂い、最近カナダの海岸に漂着したのか。その手紙には何が書かれているのか。

サーバーはアール・ウィラードという名前からできる限りのことを調べた。すると、カナダのベリングハム市で1888年8月28日に生まれた人物であることがわかった。そして1907年に結婚した後、バンクーバーに越していた。

その後アメリカのシアトルに移り、1948年にロサンゼルスで亡くなっていた。電気技師だった。

ビンは1906年にサンフランシスコからベリングハムに汽船で移動中に海に投げたものであることもわかる。

ただ、サーバーはまだビンの蓋を開けていない。手紙を読まずに、名前だけでここまでのことを突き止めたのだ。地元紙に語っている。

「いましばらくは中の手紙はミステリーということにしておきたい。だから開封せずに置いておきます」

(敬称略)